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ショパン : ワルツ第3番 イ短調 Op.34-2

Chopin, Frederic : Valse No.3 a-moll Op.34-2

作品概要

楽曲ID:23216
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ワルツ
総演奏時間:5分30秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:発展1 発展2 発展3

楽譜情報:20件
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解説 (2)

解説 : 安川 智子 (775 文字)

更新日:2019年6月25日
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【作品の基本情報】

作曲年:1831? 出版年:1838

献呈 :C・ディヴリ男爵夫人 A Madame la Baronne C. d’Ivri

【楽譜所収情報】

パデレフスキ版:No. 3/エキエル版:No. 3/コルトー版:No. 3/ヘンレ版:No. 3/

ペータース版(原典版):No. 3

ショパンの生前に出版された8つのワルツ(作品18, 34-1, 34-2, 34-3, 42, 64-1, 64-2, 64-3)の中で初めての短調によるワルツである。晩年に作曲・出版された「3つのワルツ」作品64でも二曲目に短調を置いており、いずれもショパンのワルツの中で、他に代え難い詩情を湛えている。

イ短調という調性、「Lento」という速度表示からも、舞踏会におけるワルツとは別次元の作品である。ワルツはポーランドにおいて、マズルカと並んで日常的に踊られていた舞踊であり、ショパン自身、ウィーンでは「ワルツが作品と呼ばれている!」と驚いていた。このイ短調のワルツがもつ一種庶民的な哀愁は、同時期に作曲された《ワルツ》作品18と好対照をなしており、1831年のウィーン滞在で、ショパンのワルツ観が大きく揺れている様子が感じ取れる。

曲構成は5つの楽想が一見気まぐれな順序で繰り返される(A-B-C-D-B-C-D-A-E-A)。しかし全体はやはり三部形式の変形である(A-B [bcd-bcd]-A [-E-A]))。16小節の憂鬱な冒頭主題Aは、低音の持続音、右手に配されたリズムパート、そして内声部の旋律、と声部配置は例外的だが、民族合奏団の器楽合奏を思わせる。この主題は最後に、経過部を挟んで二度繰り返される。やはり16小節からなるイ長調の主題D(第53~68小節)は、イ短調で反復されることによって、単純ながら微妙な感情の変化を見事に表現している。

執筆者: 安川 智子

演奏のヒント : 大井 和郎 (1672 文字)

更新日:2018年3月12日
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第3番 Op.34-2 a-moll  筆者は演奏に関して、同じ時間でも短く感じる演奏のほうが、長く感じる演奏より優れていると信じています。これはテンポが速いので短く終わるという話ではなく、時間は全く同じなのに短く感じる演奏の話です。全体が短く感じる演奏というのは、形式がはっきりと理解されていて、各セクションやフレーズのピークポイントが明白に分かる演奏、多彩な音色による演奏、ダイナミックの幅が広い演奏、断片的に演奏されない演奏など、多くの要因があります。いずれにせよ、聴衆を惹きつける演奏であることが大前提であり、このワルツも下手をすると大変長く感じさせてしまうワルツですので注意が必要です。この曲の解説のページに形式が載っていますのでご覧ください。  まず初めにテンポのお話ですが、勿論これはメトロノームのLentoではありません。ゆったりとという意味で理解してください。セクション毎に若干のテンポの違いがあっても問題ないと思います。それぞれの事情に合わせてテンポを設定してください(あまりにも各セクションが異なりすぎるテンポにならないように)。  冒頭4小節間、左手のメロディーを見ますと、大変落ち着かないですね。心理的に安心することができず、不安定な状態の描写です。そして8小節目がピークポイントになります。そして当然ですが、その後同じ事を繰り返した後、10小節目はディミヌエンドで11小節目に入ってください。ここで1つのセクションが終わります。さながらテノール歌手が歌うように、自由に歌って良いと思います=ルバートは必須です。  16-20小節間、18と20小節目の1拍目に四分休符がありますね。そして2-3拍に4分音符が2つずつ入っています。試しに、この休符を取りのぞき、2つの4分音符を1-2拍目にずらして演奏してみてください。それでもきれいな曲になりますね。しかしショパンは休符をわざわざ1拍目に書いています。これはagitation(ある意味アジタート)の表現で、非情に落ち着かない心理描写です。前のめりになるように弾いても良いと思います。そのように考えると、次のフレー ズである25小節目以降は4分休符が見当たりませんので、こちらのほうが精神的には安定していると解釈してよいでしょう。  次のセクションで、4つのシークエンス的な同じフレーズが、異なった和声進行とメロディーで入ってきますね。37-38、39-40、41-42、43-44の4つです。これら4つのフレーズは4つとも雰囲気を異ならせてください。それぞれの和声や音の高さに応じて、奏者が考えるようにダイナミックや音質を変えると良いでしょう。この4つのフレーズは45小節目から再び始まります。先ほどと同じなのですが、最後のフレーズだけは1回目と異なりますね。その最後のフレーズである51-52小節間はある程度ペダルを踏みっぱなしにして、バスのEを十分残し、厚みのあるフレーズにします。その際に、右手1拍目のトリルEFEをペダルに残してしまうと、濁りが生じ、それが残ってしまいますので、トリルの後でペダルを変えます。当然ですが、左手の5の指はEに置いたままの状態でペダルを変えます。そうすることにより、濁りを避けてバスを伸ばすことができますね。  53小節目以降は同主調のA-durになりますが、ここは幻想を見ているように、すこし現実離れしている部分です。65小節目のカデンツ(終止)はpppの限りを尽くしてよいと思います。色が変わる部分です。  69小節目において再びa-mollに戻ります。勿論先ほどのA-durとは雰囲気を変えてください。  さて、これ以降、殆どのフレーズは今まで出てきたフレーズの繰り返しになります。奏者は色々と工夫をして、決して中弛みしないように気をつけてください。最後に1つだけ、新しいセクションが出てきます。169小節目以降です。今までには無かった素材ですね。感情的になって良い部分だと思います。177小節目以降、再びムードを変えます。

執筆者: 大井 和郎

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