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ショパン : ノクターン第16番 変ホ長調 Op.55-2

Chopin, Frederic : Nocturne No.16 Es-Dur Op.55-2

作品概要

楽曲ID:23155
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ノクターン
総演奏時間:4分30秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:発展5 展開1

楽譜情報:13件
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解説 (2)

演奏のヒント : 大井 和郎 (635 文字)

更新日:2018年7月21日
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このノクターンはとにかくメロディー音の音数が多いノクターンで、装飾系の音符が多くあります。

それが原因で、音楽がわかりにくくなりやすいノクターンです。分析をして、メロディーラインを把握することで格段に弾きやすくなります。

いろいろな分析の仕方があると思いますが、筆者は5つの素材、2つの終止形、3小節間のシークエンス、にCodaという形で分析してみました。以下は全てメロディーラインの話になります。伴奏系は含みません。

A 1小節目から4小節目3拍目Esまで。

B 4小節目4拍目から、8小節目2拍目までのGで終わります。

A 8小節目3拍目Asから12小節目4拍目のEsまで。

C 13小節目から18小節目まで。

D 19小節目から26小節目3拍目まで。

E 26小節目4拍目から30小節目の2拍目、もしくは3拍目、もしくは4拍目までs。

シークエンス 31小節目から34小節1拍目Esまで。

A 34小節目2拍目より38小節目4拍目まで。

C 39小節目アーフタクトから44小節目いっぱいまで。

1つめの終止形 45小節目より47小節の1拍目まで。

C 47小節目2拍目裏拍より52小節目いっぱいまで。

2つめの終止形 53小節目より55小節目いっぱいまで。

CODA 56小節目から最後まで。

になります。重要な音のみをピックアップしていくとわかりやすくなります。これはあくまで1つの分析に過ぎませんが、このような分析をすることで曲がわかりやすくなり、構築していくことが楽になります。ご参考まで。

執筆者: 大井 和郎

解説 : 上田 泰史  (1391 文字)

更新日:2010年1月1日
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Deux Nocturnes Op.55

この二曲のノクターンは1843年に作曲され、初版はパリ(M. Schlesinger, 1844)、ライプツィヒ(Breitkopf und Hartel, 1844)、ロンドン(Wessel, 1859)で出版された。献呈を受けたJ. W. スターリング(1804-1859)はショパン弟子で、師を熱烈に信奉し、また恋愛感情を抱いていた。スコットランドの裕福な家系に生まれた彼女は、パリでショパンに出会ってから亡くなるまでの間、ショパンを様々な面で助けた。彼女の過剰な親切心はしばしばショパンを悩ませたが、善良なこの女性に対し礼節を保ってふるまった。彼女が集めたショパンの遺品やショパンについての記録文書、ショパン研究において重要な資料となっている。本作は二人が出会ったころの作とみられている。

これらのノクターンには、同時代のオペラ・アリアにおける歌唱様式ばかりでなく、バロック様式、とくに対位法的書法への関心が色濃く表れている。ショパンが対位法を厳格に自作に適用することは、習作として書いた二声のフーガを除けば殆どなかったが、この二曲には対位法への憧れが露呈されている。それでも、彼はポーランド時代から対位法をよく勉強しており、パリ時代も1841年にパリ音楽院院長で対位法の権威ケルビーニによる教則本『対位法とフーガの技法』を手に再び勉強している。

no.2 変ホ長調

第2曲は以下の三つの部分に分けられる。二つの主題が提示される第1~26小節(以下A)、第26~34小節(以下B)、Aの再現・展開としての第35~55小節(以下A’)、そしてコーダ(第56~67小節)。調性の異なる二つの主題を提示する点はソナタ形式を意識しているようであり、これがこのノクターンのもっとも特徴的な点である。また、第1番同様、対位法的な右手の扱いにも注目すべきである。

Aは、ショパンの多くの作品がそうであるように、属音(この曲では変ロ音)で開始される。だが、左手の開始和音は主和音ではなく、属和音であり、第2小節目で直ちに主和音に解決する。この曲が、突然に、あたかも途中から始まったように聞こえるのはそのためである。このノクターンには、主部に二つの楽想が用意されている。一つは第1~12小節(以下a)に、もうひとつは第13~26小節(以下b)にあたる部分である。aの第1主題旋律は二回繰り返される。ノクターンにおいて、ショパンは旋律を反復する際に必ず変奏するが、通常の方法は旋律の装飾である。ところが、彼はここで新しい変奏方法を用いている。曲冒頭、右手は単旋律だが、第9小節目に始まる反復の際には新しい声部を内声に加え、に変化を与えているのである。aの旋律は、A’に再び現れるが、ここでは旋律に半音階的な装飾が施され、さらに中声部には16分音符の対旋律が強く自己主張する。

同じことは下属長の変イ長調で提示される第2主題bにもいえる。bは、曲の後半Bでも再現され、二度反復されるが、いずれの場合も、単なる反復ではなく常に新しい対旋律付けがなされている(第39~第55小節)。しばしば半音階的に動くこれらの対旋律のおかげで、縦の響きは聞き手にかなり交錯した印象を与える。

コーダはそれに比べ再びテクスチュアが簡素化されすんだ分散和音とカデンツのなかで曲は閉じられる。

執筆者: 上田 泰史 

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