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ショパン : ノクターン第7番 嬰ハ短調 Op.27-1

Chopin, Frederic : Nocturne No.7 cis-moll Op.27-1

作品概要

楽曲ID:23146
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ノクターン
総演奏時間:5分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:発展5 展開1

楽譜情報:12件
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解説 (2)

解説 : 樋口 晃子 (1111 文字)

更新日:2019年2月9日
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Deux nocturnes op. 27

この2曲のノクターンは1835年に作曲され、初版はパリ(M. Schlesinger, 1836)、ライプツィヒ(Breitkopf und Hartel, 1836)、ロンドン(Wessel, 1836)で出版された。オーストリア駐仏公使夫人であったダッポニィ伯爵夫人に献呈。身分の高い彼女の捧げたことから、「貴婦人の夜想曲」と呼ばれることもある。また、1組の作品としてまとめられているが、これら2曲の曲想は互いを引き立たせるかのように、著しい対照をなしている。

No. 1 嬰ハ短調

このノクターンは、他のノクターン同様、3部分(A - B - A’)からなる。AとA’で絶えず伴奏音型を奏でる左手の6連符の分散和音は、第13小節で2オクターヴ以上になるなど、非常に広い音域をもつ。こうした広範囲な音域間のスムーズな動きは、ダンパー・ペダル(長音ペダル)の改良によって可能になった。

冒頭、第3音(e)を含まない空虚5度(cis, gis)という特徴的な響きの前奏に続いて、右手に方向性の定まらない半音階的な主題が提示される。初期の作品9-2(第2番)や作品15-2(第5番)に見られる主題反復時の華麗な装飾は、この曲では全く見られない。そのかわり、主題が反復される際には右手の旋律に二つの声部が加わり、「独唱」から「二重唱」へと変化している。旋律は他のノクターンに比べ、非常に簡素で起伏が少ないが、ダンパー・ペダルの使用によって伴奏音型と見事に溶け合う。第29小節からは、雰囲気が一転しドラマチックな中間部B(第29~83小節)にはいる。2小節単位の短いフレーズとせき立てるような同音連打、そして20小節間にわたる左手の符点二分音符の上行音階と半音によるトレモロによって、音域もダイナミックスも一気に押し広げられ、第46小節で一度頂点に達する。再び第53小節から半音階的進行が現れ、中間部の一つの情景が収束する。第67小節目には作品15-3(第6番)と同様、マズルカが登場するが、踊りは長続きせず半音階的な転調ではぐらかされ、第81小節の強烈な和音連打で遮られる。30年代のノクターンにおけるこうしたマズルカの使用は、30年に勃発した11月蜂起によって掻き立てられた民族的感情の表れとも解釈できる。主題回帰の直前、長いフェルマータの中で、左手がレチタティーヴォ性の強いパッセージをオクターヴで奏する。

A’はAの大幅な縮小形で、第 94小節で同主調の嬰ハ長調へ転調するが、これ以降をコーダとみなすこともできる。音量も速度も緩みながらAdagioへと向かい、嬰ハ長調のまま曲を閉じる。

執筆者: 樋口 晃子

演奏のヒント : 大井 和郎 (1103 文字)

更新日:2018年3月12日
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第7番 Op.27-1 cis-moll    このノクターンは一種独特な作りになっています。調性や形式が独特です。大事なことは、ピークポイントに達するまでが大変長く書かれてあり、奏者はテンションを失いがちです。ゴールがどこであるか見極め進んでください。その他、このノクターンには実にトリッキーな要素があります。早速楽譜を見ていきましょう。  調号はCis-mollの調号ですが、冒頭、肝心要の第3音が抜けたまま始まります。第3音は長3和音か短3和音を決定するという意味では第5音よりも大切なのですが、それが無いとなると実にミステリアスな出だしになります。いったい何調か分からないからです。そしてこれは11小節目までわかりません。7小節目など一見E-durでは無いかと思ってしまうほどです。しかしこのような書法はop10-12にも見られますね。この曲も冒頭は調が分かるまで結構かかりますね。  故に11小節目はcis-mollであることを分からせる意味で、強調して良いと思います。メロディーラインもここで初めてオクターブが出てきます。1つめのフレーズが終わるのは18小節目で、19小節目からは変奏になりますが、全く同じメロディーラインです。  さて、29小節目からはBセクションですが、これがピークポイントへの始まりとなります。ここからテンションを下げずに81小節目まで向かいます。Bセクションにに入るとき、タイミング的に不自然にならないように注意します。piu mossoとありますが、いきなりテンポを変えず、3連符の速度はAセクションの6連符の速度と同じにして入り、徐々に動いて行けば入りがスムーズに聞こえます。まずは最初のポイントである49小節目までクレシェンドをかけます。落ち着かな く、agitato的に演奏します。41小節目にかかれてある、sempre piu stretto を守ります。45はappasionatoで。50はsostenutoで、それぞれの表示を守ってください。  勿論52小節目で1度ダイナミックは下がりますが、緊張感は持続します。表示はagitatoとあり、左手の音形はまさにそれを描写できますね。83小節目、大きなカデンツがありますね。とにかくここまで気を抜かないことが重要です。stretto、piu mosso、accel などの連続ですから、最終的に、カデンツの前の81-82小節間などはものすごく速くなります。  人間の心理状態が極限に達する心理描写で、非常に深刻です。その緊張感を聴衆に伝えなければならず、それは聴衆をBセクションで圧迫しなければなりません。

執筆者: 大井 和郎

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ノクターン[夜想曲] 第7番