⒌ ラグタイム Ragtime 2/4
「ラグタイム」とは、19世紀末からアメリカで流行し始め、1920年代にかけてヨーロッパで黒人音楽を象徴する音楽語法として受容された。シンコペーションを多用したリズムを特徴とし、一般にジャズの前身と見なされる。
経過部の役割を担う小休止 breakを含むロンド形式。
A:第1~12小節
強烈なffの不協和音が雪崩のように下行する序奏(第1~3小節)で始まり、シンコペーションによってリズム的に誇張されながら、粗野で急速な音楽がffとfzで進行する。
B:第13~16小節
強弱指定がmfに変わり、それまでの激しい音楽的運動はいったん治まるものの、弱拍へのアクセントは執拗に反復される。
A’:第17~27小節
序奏のモティーフが経過的に転用され(小休止:第17~18小節)、Aと同一の音楽的展開が第25小節から徐々に音域を上昇させる。
C:第28~39小節
ピークに至った高音域で不協和音が反復され(小休止:第28~29小節)、Aで用いられた素材が変奏される。不協和な響きがより強調されて、音域の移動は比較的停滞する。
A”:第40~50小節
第37小節以降の反復的な音楽的運動が継続しながら(小休止:第40~41小節)、再びAへと回帰する。
D:第51~79小節
強弱指定がmfに変わり、それまでの攻撃的で外向的な音楽的性格が、幾分内向的なものへと移行する。上声が順次進行を基本とする旋律を形成し、新しい音楽的展開を担いながらも、バスが執拗に各小節最後の16分音符を刻んで、本楽曲の弱拍への偏愛を示す。第76小節から序奏とAの各モティーフが断片的に用いられる。
A’”:第80~90小節
第76小節以降の断片的な流れを受け継いで、冒頭の序奏が音域を変えて発展的に再現される(小休止:第80~83小節)。第84~90小節まではA’の第19小節以降の音楽的展開と同一(A’最後の2小節分を省略した形)。
Coda:第91~116小節
本楽章で初めて強弱指定がfffまで上昇し、第95小節ではffffにまで到達する。第95小節2拍目から、本楽章で2番目の高音域から段階的に転がり落ちるように不協和音が下行する(第95小節「墜落するように hinabstürzen」)。第103小節で「徐々にいくらか幅広くなって Allmälich etwas breiter werden」との演奏指示があり、右手でAのモティーフを想起させて、左手は音域を段階的に引き上げながら音楽的に緊張感を高めていく。その緊張感が頂点に達する第108小節で、本楽章における最高音域に達し、「幅広く Breit」という演奏指示を伴って、不協和音をテヌート気味に強調しながら本楽章における最低音域まで一気に下行する。第111~112小節で3度打ち鳴らされる不協和音(F音上の長三和音+Es音上の短三和音)がただでさえ暴力的で凄惨な音楽的展開を無残にも切断し、第113小節以降はAのモティーフの部分的な変形が3度反復して終結する。