⒋ ボストン Boston 3/4
「ボストン」とは、1860年代後半にアメリカの社交ダンス界に現れたワルツの一種で、その後イギリスに伝わった。様々なステップを含むダンス形式で、第一次大戦後には「英国風ワルツ」としてドイツ国内で人気になった。
アンバランスなロンド形式。
A:第1~22小節 「テンポ・ルバート」
冒頭2小節の序奏で、Cis音上の空虚5度がpppで二度打ち鳴らされる(前打音も空虚5度)。掴みどころのない感傷的な旋律を特徴としながら、装飾音や付点リズム(第4, 8小節等)、シンコペーション(第19~20小節等)も効果的に使用されている。また、ボストンの特徴として挙げられるヘミオラが左手の伴奏に現れ(第15~18小節)、右手の3拍子と共にポリリズムを形成している。
B:第23~64小節 「アレグロ」
pが支配的で流動的なAから、fで音型の反復が顕著なBへと移行する。第4小節目の装飾音を含む4音モティーフを繰り返しながら音楽が展開する。同モティーフを起点とする右手の下行音型が変奏・反復される間、左手の伴奏はヘミオラを形成する(第23~38小節)。第39小節から「遅いワルツのテンポで Langsames Walzertempo」の指示があるが、上記の4音モティーフは一貫して反復される。Aと同様に装飾音や付点リズム、シンコペーションが用いられる。
B’:第65~93小節
Bが全音1つ分音高を下げて、短縮された形で繰り返される。
A’:第94~115小節 「始めのテンポで」
Aの第5~18小節が再現される(第108小節以降は同一音型の反復を含む)。
C:第116~163小節
冒頭2小節の序奏が4小節に引き伸ばされて、経過的に再利用される(第116~119, 127~130, 138~141小節)。第120小節で「レチタティーヴォ風に、極めてルバート」との指示があり、ffとpppが交互に繰り返されながら、シンコペーション(第121~122, 142~143小節等)やヘミオラ(第123~124小節)が用いられる。第152小節から、第120小節以降の11小節がオクターブ音型で(上声は2オクターブ分高くなって)再現される。
A”:第164~183小節 「始めのテンポで」
Aの第3~18小節が再現される(第164~179小節)。第178~179小節が三度繰り返される。
Codetta:第184~203小節
シンコペーションで拍節が曖昧にされ、fからpppに至るまで徐々に音楽的に停滞していく。第200小節以降、Aの冒頭2小節の序奏が再現され、空虚5度を際立たせて息絶えるように終結する。