ドビュッシー :プレリュード(前奏曲)集 第2集 ヒースの茂る荒れ地

Debussy, Claude Achille:Préludes 2 "Bruyères"

作品概要

楽曲ID:22380
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:前奏曲
総演奏時間:3分00秒
著作権:パブリック・ドメイン
ピティナ・コンペ課題曲2024:F級級

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:発展1 発展2 発展3 発展4 発展5 展開1 展開2 展開3

楽譜情報:7件

解説 (1)

解説 : 白石 悠里子 (706文字)

更新日:2020年1月28日
[開く]

静かに、優しく表現豊かに。ヒースとは一般にイギリスやドイツなどのヨーロッパ北部にある荒野、あるいはそこに植生するツツジ科エリカ属の小低木を指すが、標題の正確な由来は判っていない。全体は6つのモチーフによって構成される[4]。右手の単旋律で始まる素朴なモチーフa(第1-5小節)は、両手の反進行によって緊張感の高まるモチーフb(第6-7小節)へ発展し、音高のピークとそこからの下降という運動が2回繰り返されるモチーフc(第8-14小節第2拍)、そして波打つような右手旋律によるモチーフd(第14第3拍-22小節)が続く。モチーフe(第23-28小節)は「柔らかく、軽く(doux et léger)」という楽想のもと静かに順次的に進行し、より活発で喜びに満ちた変ロ長調によるモチーフf(第29-32小節)へ至る。第33小節以降は、既出のモチーフが逆の順で登場する。第33-37小節ではモチーフe、第38-44小節(第2拍)ではモチーフd、第44(第3拍)-51小節では、モチーフaが用いられる形で曲の冒頭が回想されて静かに終わる。したがって楽曲全体は、第29-32小節のモチーフfを中心に、対称性を持った構造で作られている(見取り図)。

【見取り図】 [1]


[1] この見取り図はBourionの以下の文献に基づいている(Bourion, Sylveline. 2011. Le style de Claude Debussy : duplication, répétition et dualité dans les stratégies de composition, Paris: Vrin, p. 436)。

執筆者: 白石 悠里子