シューベルト :即興曲集 第1番 D 935 Op.142-1 ヘ短調

Schubert, Franz:Impromptus  No.1 f-moll Op.142-1

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:即興曲
総演奏時間:10分00秒
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解説 (1)

解説 : 髙松 佑介 (682文字)

更新日:2019年4月8日
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第1曲:アレグロ・モデラート、ヘ短調、4分の4拍子

 曲集の冒頭に位置する本楽曲は、ソナタ形式が意識された構造を持ちつつ、コントラストを避ける工夫がなされている。

 冒頭はヘ短調で堂々と第1主題が提示される。最初のセクションが完全終止で閉じると、ヘ短調のまま靄のような16分音符による第2のセクションが弱音で現れる。第21小節で変イ長調へと転じ、高揚が収まると、第45小節から変イ長調で第2主題が提示される。確かに、新たな主題が平行調で静かに提示される点では、第1主題とコントラストを形成しているようだが、第2主題が提示される前から平行調に転じている上、第2主題は既出の16分音符動機の骨格部分で成り立っている。つまり、図式上では第1主題と第2主題が対照的に作られているものの、実際には両主題が滑らかに移り変わっているのである。こうした事実は、即興曲D 899の第1曲と同様、ソナタ形式がシューベルトなりに翻案された結果と捉えられよう。この点が、シューマンの主張が本質的に的を射ていながら、十分ではないと概説で指摘した所以である。

 第69小節からは、中間部として新たな主題が提示される。この部分は変イ短調に始まり、ホ長調の三和音を仲介して、変イ長調へと転じる。シャープを調号に取るホ長調が新鮮な響きをもたらし、シューベルトらしい妙なる和声の移ろいが表れている。

 第115小節では冒頭主題が主調で回帰し、再現部となる。第2主題は、ソナタ形式よろしくヘ長調を取る。さらに第182小節から中間部もヘ短調で再現され、第226小節で冒頭動機がコーダとして簡潔に回帰して幕となる。

執筆者: 髙松 佑介