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シベリウス : 8つの小品 即興曲 Op.99-4

Sibelius, Jean : 8 Pieces "Impromptu" Op.99-4

作品概要

楽曲ID:21397
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:即興曲
総演奏時間:1分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (2)

演奏のヒント : 大井 和郎 (408 文字)

更新日:2024年6月17日
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学習者の皆さんは、まず、シベリウスという作曲家の言語を理解するべきであり、そのためには彼の多くの他のピアノの作品を聴く必要があります。Op76、op85、op103などは、比較的短い曲で、多くの彼の側面を知ることの出来る曲集です。是非聴いてみて下さい。

自然に対してとても感心を持っている作曲家で、彼の音楽には人間は存在しないとも言われる、異色の作曲家です。彼の音楽はあらゆる側面を見せ、彼の有名な作品は7つの交響曲で、これも是非聴いて欲しいのですが、まずはピアノ曲を色々聴いてみましょう。

この曲は彼の楽観的な側面やユーモラスな側面を表現している曲ですので、ある程度躍動的で、軽快に演奏することをお勧めします。繰り返しも多くありますので、如何にそこに変化を加えるか、即興性を持たせるかがヒントになります。ショッキングな転調(Bセクション)や、期待を外す2回目のAセクションなどの表現をどうするか、などが課題になります。

執筆者: 大井 和郎

解説文 : 熊本 陵平 (757 文字)

更新日:2025年1月16日
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三部形式である。

A[a(1から4小節)+a(5から8小節)]

B[b(9から12小節)+b1(13から16小節)]

A[a(17から20小節)+a1(21から23小節)]

コーダ(24から30小節)

主調はハ長調。

Quasi Marcia=行進曲風に、と書かれているが、モーツァルトやシューベルトの行進曲のように行進曲らしい特徴的なリズムが感じられるわけではない。伴奏部分が8分音符4つの分散和音線を規則正しく配置されていることが、強いて言えば、行進曲のイメージへリンクさせるものなのかもしれない。

 主題は冒頭四分音符のc音がタイによって後続する32分音符の同音と結ばれることによって、その後の32分音符のⅠ和音分散和音線を幾分即興的に感じさせる。この2拍目までの動きは旋律線に対する装飾的(尚且つ即興的な)動きだと考える。実際の旋律は3拍目より始まる。

 中間楽節は主調ハ長調とは遠い調性であるEs durから開始される。この楽節は音階的な上行する順次進行を付点四分音符と八分音符によって構成されている。和声的に複雑ではないが、A楽節と異なり抽象的な楽節である。こうした謎めいた楽節に対して表現のヒントとなるのは、シベリウスの交響曲かもしれない。

 交響曲第7番でも音階的モティーフはあるので、第7番を問わずシベリウスの作品を様々聞かれて、その世界観を理解することが大切だろう。

 27から28小節では、ドッペルドミナントを偽終止のように使っている。通常の偽終止でⅥ和音が使われた時のような和声解決ではないので、こうした特徴を活かした表現を考えたい。

執筆者: 熊本 陵平