《死の都》Op. 12は1920年に完成されたコルンゴルト3作目のオペラである。全3幕からなる。原作は、ベルギーの詩人ジョルジュ・ローデンバックの小説『死都ブリュージュ』と、ローデンバック自身が戯曲に改作した『幻影』のドイツ語訳。これらをもとに、コルンゴルトと父ユリウス・コルンゴルトが、パウル・ショットというペンネームで台本を作成した。初演は1920年12月4日にハンブルクとケルンの2都市で同時に行われ、その約1か月後のウィーンをはじめとしてドイツ語圏を中心に各地で再演され、第一次世界大戦後の新作オペラとしては異例の大成功を収めた。既に管弦楽曲《シンフォニエッタ》作品5(1913)や2つの1幕オペラ(《ポリュクラテスの指環》作品7(1914)と《ヴィオランタ》作品8(1916))などで名を馳せていたコルンゴルトがその名声を決定的なものとした、彼の代表作の一つである。
第1幕第5場の〈マリエッタの歌〉と第2幕第3場の〈ピエロの歌〉は単独でも演奏される。今日入手できるピアノを含む楽譜は、全幕のピアノ・ヴォーカル・スコア、〈マリエッタの歌〉と〈ピエロの歌〉のピアノ・ヴォーカル・スコア、ヴァイオリン独奏用に編曲された〈マリエッタの歌〉、ヴァイオリン独奏あるいはチェロ独奏とピアノ伴奏用に編曲された〈ピエロの歌〉、さらにオペラ全体のハイライトを20分弱のピアノ独奏用にまとめた〈大幻想曲〉、第2幕第3場の一部をピアノ独奏用に編曲した〈ブリュージュなんかいらない!〉(Schach Brügge!)がある。
■あらすじ 舞台は19世紀末のブリュージュ。 第1幕 若くして妻マリーを亡くしたパウルは、マリーに瓜二つの踊り子マリエッタに出会う。 第2幕 信心深いパウルはマリエッタの中にマリーを見出そうとするが、貞淑な妻と奔放な踊り子の差はあまりに大きい。パウルとマリエッタは決裂しそうになるが、和解する。 第3幕 聖血の行列の日、パウルは、彼を侮辱するマリエッタをマリーの遺髪で絞め殺す。するとパウルは我に返り、これまでの悲劇的な出来事は夢だったと悟り、「死の都」を去る決心をする。