この曲は横に流れなければなりません。しかし左手の伴奏は8分音符がほぼ全小節に書かれてあり、これが拍を刻む原因となり、結果、縦割りの音楽になってしまいがちです。このような曲の場合、バランスが重要課題となります(左右の大きさのバランス)。当然のことですが、左手はできる限り小さく弾き、右手を際立たせます。左手はしかしながらバスも含んでいますので、バスの音を把握してください(必ずしも1拍目や3拍目に来るとは限らず、10小節目や11小節目のように2拍目の裏拍に来る場合もあります)。
次にこの曲のセクションをわかっておきましょう。大きく分けるとABA形式になります。AとBの場所を確認しましょう。Aは1ー25小節目まで。Bは26小節目から49小節目までで、50からは再びAになります。Aは、1-16小節目(A-1)、17-25(A-2)小節目に分けることができます。
A-1はさらに2つに分かれます。10-11小節目にテンションが高まります。ここに導かれるように演奏します。11小節目の3拍目からテンションを緩め、12小節目に入ってください。これが1つ目。2つ目は、12小節目から16小節目までです。今度はCis-mollに転調してしまいますので、2つ目のセクションの方がよりテンションが上がります。もうお気づきになられた方もいると思いますが、これらのAセクションのフレーズは、最後の方にテンションが高まり、転調する次のセクションに入る準備をするという特徴があります。
つまり、11小節目でテンションは高まるものの、a-mollに戻りますので、ここは平穏に進みます。しかし、16小節目は転調する寸前ですのでテンションは高まったままで、次のセクションに受け渡します。A-2の最後の小節は25小節目ですが、26を見ると、今度はg-mollに転調していますね。そうすると25のテンションはやはり高さを保ったまま、次のセクションに繋ぎます。
Bセクションで、31小節目からはカノンになります。完全なカノンではありませんが、奏者は遅れて追いかけるほうの声部をはっきりと聴かせると、わかりやすく聴くことができます。カノンは39小節目で終わりますが、42小節目からは再び内声が加わります。左手から右手へ、または右手から左手へ、Bセクションではカノンの声部や内声を受け渡す事になるのですが、こういう箇所は機械的に弾いてしまいがちです。常に声部を理に叶うようにシェープしてください。
66小節目は、コントラバスなどのpizzicatoが入ってきます。全音符をソステヌートペダル(真ん中のペダル)で伸ばした上で、バスの音をスタッカートで短く切ります。