北爪 道夫 :様々な距離II
Kitazume, Michio:Distances II
総説 : 須藤 英子 (436文字)
東京芸術大学大学院修了後、パリ音楽院で学んだ北爪道夫(1948-)。寡作家ながら、その作品のほとんどが再演の機会に恵まれている彼は、よく「高打率の作曲家」と形容される。微妙な音色変化と立体的な音響構成を特徴とし、特に管弦楽の分野ではそれらがよく発揮されている。『様々な距離Ⅱ』は、同名のオーケストラ作品『様々な距離』(2005)の翌年、第6回浜松国際ピアノコンクールの委嘱により作曲され、同コンクール第2次予選課題曲として初演された。タイトルの通り、「音楽を様々な種類の距離感をもつ表現として意識し」、作曲された作品。ここでは、音の高さ間の距離である音程のみならず、音の強弱や残響さえもが、距離感として捉えられている。例えば、ソステヌートペダルを踏みながら打鍵された音そのものと、それによる残響との距離感。また同音連打を、強弱変化を加えながら行うことによって生じる距離感。時間芸術である音楽に、空間的概念である距離の感覚を応用することにより、豊かな時空間が醸成されている。
様々な距離II
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