作品概要
作曲年:1971年
出版年:1971年
初出版社:全音楽譜出版社
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:曲集・小品集
著作権:保護期間中
解説 (1)
執筆者 : ピティナ・ピアノ曲事典編集部
(1481 文字)
更新日:2012年6月21日
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執筆者 : ピティナ・ピアノ曲事典編集部 (1481 文字)
森と野原から―風と雲と光のうたをもとめて・・・
作曲者のことば
この曲集は、四季の自然のうつりかわりとそのなかでの色々な種類のちいさな虫たちの生態を童話風の目でとらえ題材として作曲したものです。かつてNHK教育テレビで約一年に渡り放送された昆虫の生態を紹介した番組のために作曲した曲が原曲として土台になっていますが、原曲が合唱と小器楽編成用であったのに対し、今回はまったく新しくピアノ独奏の曲として最初から発想しなおし完成させました。したがってその意味においては原曲とはまったく別のものであって、これは純粋にピアノのために考えられ作られたものです。
ただ、歌詞であった古川さんの詩があまりにすばらしいので楽譜と一緒にのせさせて頂きました。自然の片すみでひそかに生き続けるちいさな生きものたちに、あふれる愛情と詩情をそそいだこれらの詩は、動物が大好きな私にとって大きな霊感のもとになりました。その行間に早春の風の冷たさを感じ、森の木のささやきと谷川の流れの音をきいたのです。
実際これらの曲は私にとって専門的な分野の作品とはまたちがった意味で自分にとってなくてはならぬものとなりました。
わかりやすい曲であるために誰にでもわかってもらえるということ、弾いてもらえるということ、そしてまた、こうしたわかりやすい音楽でなければあらわせないなにものかがあるということのためと思います。
これらの曲は管弦楽曲や室内楽曲と同じように、いまや私自身のかけがえのない大切な一部分です。
全体は、春、夏、秋、冬の四部に分かれていますが、実際の作曲の進行もほぼこれと一致していたので季節のうつりかわりは一層深く反映しました。春のあかるさ、初夏のみずみずしさ、秋の静けさ、冬のきびしさ。
いくつかの曲についてはいまも忘れがたい思い出が残っているものもあります。
たとえば「冬」の部の「ハサミムシのこもりうた」、この曲を作曲した日、東京には二月のおそい雪が降りました。白くつもったやわらかい春の雪と、しめったつめたい空気、その中でどこか遠い山のはざまの早春を思いながらこの曲をかきました。この曲の全部にその時の気分が反映しています。
また一方において、こういう情緒にもたれて器楽曲として不完全なものにならないようにとくにつとめました。そして、すこしでも単純にそして完全にということを努力の目標としました。できるだけ無駄な音がないよう、できるだけ少ない音で、またやさしい技巧ですませることにつとめたので、一二曲の例外はありますが、大部分は初歩的な技術で充分弾きうるはずです。またいわば煮つめられた結果の単純さであるためくり返して弾く練習用の曲としても適しています。
内容が童話的なものであるのにあえて「こどものための」という副題をつけなかったのは、こどもと限らず大人の感情にも適応するものであるためですが、もちろん、こどもの練習用の曲として使用して頂いても内容的にも技術的にも適当なものです。
いまや都会に住む者にとって森も野原も空も遠いものになってしまいました。虫たちもデパートの商品となる世の中になってしまいましたが、自然へのあこがれはなお一層だれの心にも生きているものと思います。
この小さな曲集が、森の葉ずれの音や野原の草のかおりや、岩の間を流れる谷川の冷たい感触を、弾いてくださる方々の心につたえることができれば、それが作曲者の願いのすべてです。
なお、春夏秋冬の区分は暦の上のものよりも自然な季節感にしたがいました。
また全曲を通していくつかの主題動機が循環的にあらわれて統一感をつくるようにしてあります。
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