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川上 統 :フォルテピアノ独奏のための《閻魔斑猫》

Kawakami, Osamu:"Manticora" for 5-octave fortepiano

作品概要

楽曲ID:17231
作曲年:2008年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:種々の作品

解説 (1)

執筆者 : 川上 統 (887文字)

更新日:2011年7月20日
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《「鍵盤楽器は甲虫である!!」と、最初から極端に個人的な思いのたけを述べさせていただきました。そう、フォルテピアノは俊敏な肉食の甲虫に見えたのです。音が硬すぎないのも、どこか気まぐれな雰囲気の音も、フォルテピアノの姿自体も、ぴったり。そこでこの曲なのです。ちなみにチェンバロはハナムグリという昆虫っぽいと思っております。

さて、本題の大変読みにくいこの曲のタイトルは「エンマハンミョウ」と読む肉食昆虫です。まず、「ハンミョウ」という昆虫から説明いたしますと、この昆虫「ミチオシエ」という異名でも知られる虫で、近寄る度に跳ねて逃げ回るのですが、これがまるで道に導くかの如く逃げ回るのでこの異名がついています。小さめで、なかなか美しい昆虫です。

このエンマハンミョウという種類になるとハンミョウよりも数段大きく、またとても強力なハンターでもあります。サソリやムカデに匹敵する程の肉食性荒いです。大きな顎に眉間にシワが寄ったような悪人面構えで、閻魔の名に恥じません。動きもハンミョウに恥じず俊敏、挙動不審に獲物を狙い続け、仕留めます。しかし、挙動不審というのがまたポイントでして、猛然と襲い掛かったりボーッとしたり、震えたり、落ち着きのないところが他人とは思えません。

Manticoraというもう一つ言葉があるのですが、こちらはその学名に使われている言葉です。この名の意味は、ヨーロッパの伝承の怪物の名前です。顔は人間、体は獅子、そして尾は蠍という、怪物好きにはたまらない合成怪物です。生物の学名にはこうした神話や伝承の怪物の名を冠するものが多々あります。学名をつけた人には、きっとこのエンマハンミョウは合成怪物に見えたのでしょう。尻尾はないのですけどね・・・。

さてさて、閻魔でありヨーロッパの怪物であり、二つのイメージはどうにもちぐはぐながら、当の昆虫は至ってマイペースそうなところが気に入っています。そんな曲になると良いなと思い、フォルテピアノという肉食甲虫のような楽器、そして大井浩明さんという繊細な表情も機動力も素晴らしいピアニストさんに託しました。心より感謝申し上げます。》

執筆者: 川上 統

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