2010年に作曲。
ビリバとバンレイシはともに、外見は異様だが食すれば甘く美味なトロピカルフルーツの名前である。ビリバは「伯爵夫人の果物」、バンレイシは「伯爵の果物」と呼ばれ親しまれている。余談ながら(題名から推察頂けると思うが)この曲は、ギターソロ《熱帯伯爵》とも関係がある。
さて、この曲の初演はライブハウスの門仲天井ホールであったので、その場所柄から、せっかくなら大井氏と共演できる曲を、ということで、書かれたもの。初演の演奏会「POCシリーズ」は5ヶ月連続での、毎回がオリンピックと言える程の難曲揃いだったので、あえて、一つくらい怠惰で冗長な曲もアリではないか、と思い作曲した。怠惰で冗長と書くとネガティブだが、時間軸が歪んでいくように推移する作品、と書けば良いだろうか。
わたしの作品集CD《熱風サウダージ劇場》の評に、長木誠司氏は「現実にあるものを異化しようとか、別の意味のように聴かせようといった戦略ではなく、現実そのものがひと揃いそっくり入れ替わってしまうような、奇妙なヴァーチャル現実感を味わわせてくれるという意味では、やはりユニークな創作と言うべきだろう。それは例えば夢のなかでどこまでも煙に巻かれて落下してゆくときの、重力から自由になった快感に近い。」と述べているが、その世界がこの曲からも感じて頂けるのではないかと思っている。
なお、ビリバは英語で「Biriba」だが、バンレイシの方は「Sugar apple」や「Sweetsop」などの表記があるが「バンレイシ」そのものがないようだ。「レイシ」は「ライチ」の意味らしく、ならば「バンレイシ」のローマ字表記があってもおかしくない筈だが…。もしご存知の方がいらしたらお教え下さい。