スカルラッティ, ドメニコ :ソナタ K.59 L.71 ヘ長調
Scarlatti, Domenico:Sonata F-Dur K.59 L.71
執筆者 : 丸山 瑶子 (244文字)
繰返される音形の僅かな変化によるシンタックスの崩れが音楽を先へと進めている。例えば第6小節第1拍のト-ハの下行は直前に繰返された1小節単位の動機との共通点から、同じ動機の3回目の繰返しを予想させるが、ここでは続く音階が前2小節の第4拍の音形となり、別の素材に基づくゼクエンツへ繋がる分散和音が導かれる。同じく第19小節でも、小節後半が第18小節から僅かに変更されて新しいゼクエンツへ移行する。なお冒頭と終止が分散和音の下行で共通するのはこの作曲家によくある動機の二義的な使用と考えられる。