スカルラッティ, ドメニコ : ソナタ ト短調 K.4 L.390
Scarlatti, Domenico : Sonata g-moll K.4 L.390
作品概要
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:3分40秒
著作権:パブリック・ドメイン
ピティナ・ピアノステップ
23ステップ:発展1 発展2 発展3 発展4 発展5 展開1 展開2 展開3
楽譜情報:3件解説 (2)
執筆者 : 丸山 瑶子
(829 文字)
更新日:2011年9月2日
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執筆者 : 丸山 瑶子 (829 文字)
ソナタ K1. - K.30について
スカルラッティの鍵盤のためのソナタのうち、概ね推定される作曲年代に基づいて番号付けされたカークパトリック番号でK. 1から30まではEssercizi per Gravicembaloとして出版され、騎士階級を下賜された返礼として、ポルトガル王ジョアン5世に献呈された。(なおこの曲集は一般的に《チェンバロのための練習曲集》と訳され、またスカルラッティの鍵盤楽器のための作品は主にチェンバロ用と推定されているが、研究の現状では、チェンバロ以外の鍵盤楽器が完全に想定外であるかははっきりしていない。)これは生前に唯一、作曲家自身が出版した曲集で、その序文は作曲家自身による真正な文書資料としての価値を持つ。
序文では、曲集が演奏技法の修練を目的としていることが示唆され、彼が音楽教師として仕えたマリア・バルバラの日々の練習用という実用的な目的で書かれたと推測できる。作曲年代に関しては、Esserciziはかなり前に書かれたソナタを推敲したものとして、多くの研究者が早期の作曲年代を主張しているが、結論は未だに出ていない。
全30曲の配列は発展的学習を可能とするもので、後の作品になるほど長く、難しくなるよう並べられている。形式は2部形式を基本とする。また作品の冒頭が両手の短い模倣となるのはスカルラッティのソナタに典型的で、多くの場合、模倣となるのは作品の残りの部分の主要素材と見たところは関連が薄いと思われる音形である。
なお序文には曲集全体の音楽的内容に触れた言葉もあるが、その解釈については、序文が謙遜や建前の入りやすい文章であることも手伝って、繰り返し議論されている。
K.4について [Allegro] ト短調
冒頭の3度の分散和音と、初めの終止カデンツに現れる跳躍と3度の音階下行から成る動機が作品全体に用いられる。大半は2声で書かれるが、終止カデンツ付近は3声となり、書法の変化と声部の豊かさにより、終止を予期させる。
演奏のヒント : 大井 和郎
(678 文字)
更新日:2025年7月21日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (678 文字)
方向性が重要なソナタです。何処に向かって進んでいるのか、常に聴き手に感じさせる事が大事です。それには強弱の変化は必須なのですが、どのように強弱を決めていくかは奏者に委ねられます。
例えば前半を例に取ってみましょう。前半で、最も高い位置に書かれている音は、2小節目2拍目表拍に書かれているAです。このAを超える音は前半ではありませんので、Aが出てきたら、少なくともテンションは上がっていると考えます。
これは一例に過ぎませんが、強弱の付け方です。ご参考まで。
冒頭フォルテでスタートし、2小節目、2拍単位の下行形シークエンスで徐々に音量を落とし、5小節目、g-mollの終止形にpで達します。そこから今度は上行形シークエンスで8小節目のAに到達します。そこから再び下行して音量を下げ、10〜12小節間クレシェンドをかけ、13小節目、恐らく前半のピークポイントであろう場所に達します。この時に、2拍ずつ同じパターンが3回繰り返されます。この3回を、例えば
1 全く強弱を変えずに弾き続ける
2 1つ目を大きく、2つ目を小さく、3つ目を大きく等、1回毎に強弱を変える。
3 1つ目で一度音量を落とし、1つ目より2つ目、2つ目よりも3つ目、と徐々にクレシェンドをかける。
等のやり方があります。奏者の自由です。そして15小節目に最後のAを迎え、そこから徐々に下行形シークエンスで音量を落として行きます。