バルトークは前作のピアノ協奏曲第1番で、ピアノの打楽器的な奏法を追究して独特の音響を創り上げたが、その一方で「よく出来ていると思うが、オーケストラにとっても聴衆にとっても難し過ぎた」という趣旨のコメントを残している。第1番の困難を「改善する」という創作意図のもとで書かれたこの第2番は、確かに個々の音楽的モティーフが明快な上、作品全体がシンメトリとなっていることで構成美が保たれている。ただし、ピアノパートは第1番から引き継がれた打楽器的な奏法に加え、管楽器の華やかな響きに負けない重厚な和音が連続しており、とりわけ第1楽章・第3楽章についてはほとんど休止がないため、ピアニストにとってはかなりの難曲となっている。
この協奏曲を作曲したころのバルトークは、作曲家としても演奏家としても国際的な活動への関心があった。そのことは演奏家としての活動範囲が広がったことによってだけではなく、国際連盟による知的協力委員会(ICIC)にトマス・マンの招待を受けて参加していたことなどからも窺える。こうした彼の音楽活動状況の変化は、直接的ではないにせよ、このピアノ協奏曲のより「聴衆にとっての快さ」を求めるというスタンスに反映されていると考えられる。
前述の通り、このピアノ協奏曲では3つの楽章がシンメトリックな構造を有することで、循環的な時間と直線的な時間が共存している。第1楽章と第3楽章に同じ音楽的素材が用いられ、第2楽章がアダージョ ― スケルッツォ―アダージョの三部形式になっていることで、作品全体がA-B-C-B-Aという構成になっている。同時に、第1楽章が管楽器のみのオーケストラ編成なのに対し第2楽章は弦楽器が中心、そして第3楽章では双方とも活躍することには、第1楽章と第2楽章の音楽的内容が第3楽章で統合されてゆくという構成も観ることが出来る。