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クーラウ :「コペンハーゲンの魅力」――デンマークの旋律によるロンド Op.92

Kuhlau, Friedrich:Les charmes de copenhague. Rondo für Klavier Op.92

作品概要

楽曲ID:9264
出版年:1828年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ロンド
総演奏時間:17分30秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (1)

総説 : ゴーム・ブスク (翻訳:石原利矩 監修:上田泰史) (1955文字)

更新日:2018年3月12日
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・初出 『オデオン』紙、第2巻、第2号、2~23ページ。

・初版楽譜の詳細  初版譜の表紙には、次の情報が含まれている。

「F.クーラウによって作曲されたピアノフォルテのためのデンマークの愛好された様々なモチーフによる序奏とロンド、コペンハーゲンの魅力、作品92、著作権は編集者にあり、価格1リグスダーラー、24シリング、1ターラー(1リグスダーラー = 24シリング)、コペンハーゲンのC.C.ローセ社」。

楽譜は横長版、彫版印刷による。『アドレッセ』紙1828年8月5日号に、同紙7月26日号に掲載された予告の文言とともに、広告が掲載された。広告には、次のような文句が踊っている。「次号にはF.クーラウの良く知られたメロディを伴う、大規模な新作の華麗なるロンド《コペンハーゲンの魅力》が含まれる」。

クーラウが作曲したロンドの主要作品に位置づけられる本作が、他の多くのロンドや都市名を冠して「~の魅力」と題された作品と著しく異なるのは、デンマークのメロディを含むという点である。一般に、この種の作品では作曲者が滞在したと思しき都市の名前がついているが、その国のメロディが直接引用されることはない。これに類するもので以下のような作品が知られている。殆どがロンドである。

 1) モシェレス(Moscheles):パリの魅力、イントロダクションと華麗なロンド、作品54、1821年 2) モシェレス(Moscheles):ロンドンの魅力、華麗なロンド、作品74 3) カルクブレンナー(Kalkbrenner):ベルリンの魅力、作品70 4) カルクブレンナー(Kalkbrenner):カールスバートの魅力、作品174(ピアノとオーケストラ) 5) チェルニー(Czerny):バーデンの魅力、ロンド・パストラール、作品45 6) ピクシス(J.P. Pixis):ウィーンの魅力、作品48 7) ヒュンテン(Hünten): ワルシャワの魅力、優美なポロネーズ、作品3、1821年 8) シュヴァルツ(Carl Schwarz):スウェーデンの歌と踊りによるファンタジー(=変奏曲)、作品18、1830年。*シュヴァルツはクーラウの弟子で、師のロンドに触発されて作曲された。

しかし、クーラウの《コペンハーゲンの魅力》には、少なくとも次の6曲のメロディが含まれている。 1) ベイ(Rudolph Bay):《緑の堤を持つデンマークの草原》(1823年)(本作第17~20小節、および第37小節から)に暗示されている。 2) ワイセ(Weyse):《デンマーク、聖なる響き》、《トリコルディウム》(第85小節)(トリコルディウムTrichordiumとは、3つの音で構成された音型を意味する)。これらのメロディは175小節に及ぶ長い序奏の中に現れる。ワイセの《トリコルディウム》は1820年に行われた「国民歌」の歌詞懸賞の機会に選出されたユリアーヌ・マリー・イエッセン(Juliane Marie Jessen)の歌詞に付けた2つのメロディの第2曲。A, H, Cisのたった3音で構成されている。ベイのメロディは3音のメロディの後に繰り返されている(第139小節)。ロンド自体は、クーラウ自身のメロディによって導かれる(第176小節)。ニ短調の主題には、gisという異質な音(トリトヌス)が登場するが、この音への跳躍は、のちに《妖精の丘》序曲にも見られる急速な主部でも用いられる。このロンドは随所で《妖精の丘》序曲と類似しているので、ある種の前段階的試みと捉えることができる。ヘ長調の第2主題(第237小節)は以下のワイセによる《デンマーク、聖なる響き》に基づく。 3) ワイセ: 《デンマーク、聖なる響き》。ここでは「国民歌」の最初の重厚な行進曲が引用されている。クーラウはこの曲が登場した翌年、作品35のピアノ変奏曲の主題に用いている。本作品において、この旋律はすぐに変奏され、同じ行進曲の様式により長調で再現される。 4) クロイアー(H.E. Krøyer):《ようこそ、青年の森へ》(1822年)(第342小節)。このメロディは1844年に上演されたホストルプ作のコメディ《隣の人々Genboerne》に登場する鍛冶屋の女将の歌〈この冬は、異常に寒いわ」で知られるのみである。 5) クーラウ自身のメロディ、すなわちオペラ《ルル》(1824年)序曲の第2主題(第395小節)で、その後にそれ以上に劇的な部分が続く(408小節以降)。 6) 《クリスチャン王は高きマストの側に立つ》の最初の4小節(第491小節)、次に続く《彼の剣は迅速に打ち据えられる》の2小節は印象的な終曲の前の513小節以降に現れる。

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