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ヘラー :鱒(フランツ・シューベルト)に基づく華麗なカプリス Op.33 変ニ長調

Heller, Stephen:La Truite (Franz Schubert), caprice brillant Des-Dur Op.33

作品概要

出版年:1844年 
初出版社:Schlesinger
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:カプリス
総演奏時間:5分40秒

解説 (1)

総説 : 上田 泰史  (1354文字)

更新日:2014年11月21日
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出版:Paris, Benacchi et Pescier, 1843

献呈:Madame Jenny Montgolfier

シューベルトの有名な歌曲『鱒』(D 550)の自由な改作。ヘラーは1820 年代半ばにウィーンで一時期を過ごした。この街でC.チェルニー(1791 ~1857)、A. ハルム(1789 ~1872)、C. M. v.ボクレット(1801 ~81)に師事している。このボクレットはシューベルトの親友でもあったが、作曲家ヘラーの才能を評価しなかった。だが、彼を通してヘラーはまだ存命中だったシューベルトの作品を深く知る機会を得た可能性がある。

1838 年にパリに移った後もヘラーはシューベルト作品と不思議な縁で結ばれた。1842 年、ベルリンの出版者シュレジンガー兄弟はパリを訪れた折、ヘラーに8 つのシューベルト作品を題材にしたピアノ曲を依頼した。翌年、ヘラーはシューベルトの『鱒』、『魔王』、『郵便馬車』、『涙の賛美』の4 作に基づく力作を仕上げた(作品33 ~35, 『涙の賛美』は作品番号無しで出版)。パリのリショー社がフランス語の訳詞によるシューベルトの歌曲を「全集」という触れ込みで出版したのはその2 年後のことだった。

Ch. F. D. シューバルトの詩による原曲は、元気に泳ぐ鱒を気持ちよく眺めていた詩人が、釣針にかかる鱒を目の当たりにして憤慨するという心情の推移を描く。「カプリース(仏)」の原義は「気まぐれ」「移り気」の意で、19 世紀にはピアノのジャンル名として確立され自由な展開・構成をもつ楽曲にしばしばこの名が与えられた。本作も原曲の素材を使いながら独自の華麗なピアノ作品に仕上げられている。

全体は序奏と5 つのセクションおよびコーダから成る。序奏(1~18 小節)- A(19 ~46 小節)- B(47 ~72 小節)- B’(73 ~98 小節)- C(99 ~122 小節)- A’(123 ~153 小節)- コーダ(154 ~190 小節)。華麗な序奏に続いて主要主題が中声部に現れる。A では、19 ~26 小節のフレーズは原曲より一回多く繰り返されるが、それ以外はほぼ忠実に最初の詩節の旋律を提示する。

一方、伴奏は原曲と異なり切れ目のない右手の16 分音符に置き換えられている。B は詩の第3 節に付けられた短調の旋律に当たるが、4 小節間原曲の旋律を左手で2 回繰り返した後、原曲から逸脱して新しい動機が右手の華麗なアルペッジョの下で左手にオクターヴで現れる。69 小節でヘ長調の主和音に終止、主要主題の動機でB が締めくくられる。

B’は変ホ短調で開始され、直ちに変ロ短調に転じる。C では右手に旋律が移り主題の新たなヴァリエーションが登場する。歌曲の旋律は変ロ短調と変二長調の叙情的な旋律に姿を変え123 小節で終止すると同時に、主題が回帰(A’)する。A’は原曲の第1 節を、A よりも厚いテクスチュアの中で提示したのち、142小節からコーダに向けてクライマックス(153 小節)が築かれる。

コーダでは主題のいくつかの動機を活用しながら最上声で旋律が形成される。最後はƒƒの急速なオクターヴで演奏される分散和音を響かせ、華々しく曲を閉じる。

執筆者: 上田 泰史 
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その他特記事項
※ 『ステファン・ヘラー ピアノ曲集 II』(カワイ出版、2014)より出版社の許可を得て転載。 カワイ出版ONLINE:http://editionkawai.shop16.makeshop.jp/shop/shopdetail.html?brandcode=000000006083