ヘラー :ファンタジー=カプリス Op.113
Heller, Stephen:Fantaisie-Caprice Op.113
執筆者 : 上田 泰史 (310文字)
「幻想」Fantaisie「気まぐれ」Capriceという言葉をタイトルに冠した作品だが、同じようなタイトルをもつ同世代の作曲家による作品に比して演奏の誇示は控え目で、むしろ必要最低限の音を用いて形式を整えることに関心が向けられている。全体は序奏と複重線で区切られた5つの部分からなる。各部分で序奏のモチーフ、これに続くシューマン風のテーマ、付点リズムのテーマが巧みに展開され、並列された楽段が互いに関連付けられている。書法は一見簡素だがきわめてシンフォニックで、木管楽器や弦楽器を思わせるパートが緻密に書かれている。生涯、殆どピアノ音楽と歌曲しか書かなかったヘラーだが、オーケストラ作品への深い造詣がここに見てとれる。