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トンプソン :現代ピアノ教本1への第2ピアノ

Thompson, John:Second Piano Accompaniments for use with Modern Course for the Piano, First Grade Book

作品概要

楽曲ID:77613
出版年:1950年 
初出版社:Willis Music
楽器編成:ピアノ合奏曲 
ジャンル:教則本
総演奏時間:30分00秒
原曲・関連曲: トンプソン現代ピアノ教本1

解説 (1)

解説 : 西原 昌樹 (2060文字)

更新日:2021年12月24日
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トンプソンの「現代ピアノ教本」(全5冊)は1937年に発表され、世界で最も広く普及しているピアノメソッドの一つに数えられる。クラシックはもとより、ジャズやポピュラーピアノの指導者の支持が厚いことも特筆される。日本でも1972年に全音よりウィリスのライセンス版(大島正泰氏訳編)が出て、現在まで増刷を重ねてきた。特に第1巻(現代ピアノ教本1)は発行部数が多く、2021年現在、全音版では208刷を数えるロングセラーである。この第1巻全50曲にはトンプソン自身が書いた第2ピアノパートがあり、全体が2台ピアノの楽曲として演奏できるようになっている。どのくらいの方がこの事実をご存知だろうか。トンプソンが、レッスンに連弾や2台ピアノを取り入れる重要性を多くの教本で繰り返して強調しているにもかかわらず、少なくとも日本での導入と実践は充分とは到底言えないようだ。かろうじて「小さな手のためのピアノ教本」の伴奏譜「小さな手のための合奏教本」の全音版が利用される程度にとどまっている。トンプソンが自作に伴奏パートを書いた曲集は次の5点である。

・小さな手のための合奏教本(4手連弾・2台ピアノ、全30曲)

 Teaching Little Fingers to Play Ensemble [Willis Music, 1937 / 全音ライセンス版 1972]

・現代ピアノ教本1への第2ピアノ(本作、全50曲)

 Second Piano Accompaniments for use with Modern Course for the Piano, First Grade Book [Willis Music, 1950]

・第一課程練習曲集への第2ピアノ(全24曲)

 Second Piano Accompaniments for use with First Grade Etudes [Willis Music, 1950]

・一年生の2台ピアノアルバム(全12曲)

 Two Piano Album for the First Year [Willis Music, 1950]

・「スタディーズ・イン・スタイル」への第2ピアノ(全25曲)

 Second Piano Accompaniments for use with Studies in Style [Willis Music, 1950]

(なお、上記5点とは別に、トンプソンの長男ジョン・トンプソン・ジュニアが書いた「一年生のための旋律的な連弾アルバム」(全11曲)[John Thompson Jr. : A Tuneful Duet Album for the First Year, Willis Music, 1940] もある)

トンプソン自身の書いた第2ピアノパートは、原作者らしい自由な創意を発揮したものである。原曲の和声を補強したり、メロディを平行音でなぞるといった無難な伴奏にとどまらない。原曲の内声や動機の抽出・拡張、対位法の遊び、新奇の音型の投入など、曲ごとに工夫を凝らし、一曲ずつが小なりといえども立派な2台ピアノの作品となっている。学習者にとって大きな励みになるうえ、一人で原曲に立ち戻ったときの意識も根本から違ってくる。教える側も、2台ピアノの演奏を契機として原曲の指導ポイントに改めて気付くことも多いはずである。もしもピアノが2台ある環境にいながら、この第2ピアノパートを使わずに一方通行のレッスンをされているとしたら、これほどもったいない話はない。ぜひ有効に活用し、生徒と先生が一緒になって合奏を楽しんでいただきたい。第2ピアノパートに寄せたトンプソン自身の序文を拙訳にて以下に紹介しておく。稀代の教育者の確信に満ちた提言として傾聴に値しよう。

序 文

第2ピアノの伴奏を使うことで得られる利点は明らかで、多くの説明を要しないが、ここでは、対比、ニュアンス、繊細さが教師により強調されるほどに、生徒の感受性と反応力が磨かれることを指摘しておこう。2台のピアノを使うと、教師は以下のことができる。

1. めりはりのきいたリズムを設定することでテンポをコントロールすること

2. アクセント、フレージング、鋭いスタッカートによりリズムを柔軟にすること。

3. クレッシェンド、ディミヌエンド、リタルダンド、調のニュアンスを賢明に適用して感情表現を後押しすること。

微細であるために言葉にはしにくいが、生徒は多くの効果を吸収し、身につけた効果はその後にも生かすことができるだろう。

本書の伴奏は意図的に出来るだけシンプルにしてある。実のところ、伴奏の多くは第一課程の別の生徒が弾いてもよい。間違いなく、第2ピアノへのとりくみは、合奏に適した速度に対応しようと努力する中で、生徒がそれまでに学んできたことを復習する機会になるだろう。

注  ユニゾンでの開始を容易にするため、各々の伴奏の冒頭に、生徒のパートの最初の4小節が小さな音符で示してある。

ジョン・トンプソン

執筆者: 西原 昌樹
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