作品概要
出版年:1839年
初出版社:Schlesinger
献呈先:Mademoiselle Frédérique Rist
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:練習曲
著作権:パブリック・ドメイン
※特記事項:※ 『ステファン・ヘラー ピアノ曲集 I』(カワイ出版、2014)より出版社の許可を得て転載。 カワイ出版ONLINE:http://editionkawai.shop16.makeshop.jp/shopdetail/000000006072/
解説 (1)
総説 : 上田 泰史
(792 文字)
更新日:2014年11月20日
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総説 : 上田 泰史 (792 文字)
*上の各曲一覧は第4版(Paris, Lemeoine,1859)に基づく。
本作はパリ到着の翌年に出版されたヘラーの出世作。パリのシュレジンガー社の初版では、単に『全長短調による24 の練習曲』と題されていたが、43 年に18 曲を抜粋(一曲のみ新曲を挿入)して発表したドイツのシュレジンガー版では『フレージングの技法-サロン曲集, 旋律的練習曲集』という新タイトルが与えられた。1859年までに4版重ねたことから、この練習曲には継続的な需要があったことがわかる。第4版では曲の差し替えおよび改訂の跡が見られる。ヘラーの生前に出版されたおそらく最後の版である第4版には、タイトル、曲の配列等に関してヘラーのより決定的な意志が反映されていると思われる。
第3 番 「カンツォネッタ」 アレグレット・コン・モート
「カンツォネッタ(伊)」は「小さな歌」の意。この当時は、感傷的で深刻な歌詞・旋律を特徴とする「カンツォーネ(伊)」や「ロマンス(仏)」よりも小規模で、快活な性格を特徴とした。
右手は旋律と伴奏を同時に演奏する。旋律をよく際立たせ、伴奏はギターを爪弾くように素朴なスタッカートを心がけ、左手は軽やかな ppを意識することでタイトルにふさわしい性格が出るだろう。
第15 番「アルバムの一葉(いちよう)」 ポーコ・レント
ヘラーの時代の社交界には、芸術家たちが詩や楽曲、デッサンを一つのノートに書きつけ、思い出として特定の人物に捧げる習慣があった。「アルバムの一葉」とはそのようなアルバムの一枚の意。39 年のフランス初版では冒頭2 小節の前奏はなく、26 ~27 小節で結句を形成し曲が終結する。だが第4 版ではその後に主題が回帰し、コーダが加えられている。ゆったりとした叙情的な旋律が淡々としたハープ風の伴奏の上に浮かび上がるように、前景と後景の音色の違いを意識することがポイント。