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柴田 南雄 :三つのカノン No.33

Shibata, Minao:Three Canons No. 33

作品概要

作曲年:1969年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:カノン

解説 (1)

総説 : 仲辻 真帆 (986文字)

更新日:2018年3月12日
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《3つのカノン》(Op. 33)は、小学校3、4年生までの子供が弾けるように書かれたピアノ独奏曲である。1969年、桐朋学園大学音楽学部付属「子供のための音楽教室」(当時の代表者は別宮貞雄)の委嘱を受けて作られた。子供を想定して作られたとは言っても、それぞれの旋律が追奏し、重なり合い、絡みついてゆくカノンの面白さを引き出して、独特な情緒さえ漂わせるこの3曲は、大人が弾いても楽しめる作品となっている。  柴田の言葉を借りると、1曲目は「ふつうの長調」、2曲目は「民族的な音階(または昔の教会旋法)」、3曲目は「長音階とその半音下から始まる倒立ちの長音階」で作曲されている。  各作品の概説を以下に記す。  1曲目は、基本的に8度のカノンによって構成されている。左手が先に旋律をうたい始め、1小節おくれて右手がこれを追う。(ただし再現部の前だけは例外で、半小節おくれとなる。)左手は一見すると伴奏のようにも見えるが、そのなかには旋律が隠れているので演奏者はこれを浮かび上がらせるように弾く必要がある。  ややエキゾティックな趣を醸し出すのが2曲目である。A→B→Aという3つの部分から成り、Aの部分はe音を中心点とする反進行のカノン、Bの部分はa音を中心点とする8度のカノンとなっている。一方で、カノンという形式のみにとらわれず、各音型のリズムの面白さやフレーズの流れを吟味しながら伸びやかに演奏することで、俄然この曲が活き活きしたものとして響きだす。  3曲目は反進行のカノン。音階の設定の仕方に作曲者の工夫がみられる。右手はc、d、e、f、g、a、h、cで、左手はh、a、g、fis、e、d、c、hという、いわば末広がりの構図。右手・左手が組み合わされるなかで時には不協和音も生じるが、それもまたこの作品に刺激とコクを与える香辛料のような役割を果している。上記の音階に関して、右手に開始音cを置き、左手の開始音として半音下のhを重ねて各音を並べてゆくと、そこにはトニックとドミナントの対応関係が見出される。とりわけ3曲目のカノンでは、トニックやドミナントに色付けられた各旋律の対話が曲全体の推進力となってゆく。右手・左手の異なる音階によって形成される旋律の「横の線」と、その旋律の接点で生まれる和音の「縦の線」。この両者が織りなすカノンは、小品ながら創意に満ちている。

執筆者: 仲辻 真帆
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