二部形式である。
A提示部[主題(1から4小節)+展開(5から7小節)+終結(8から12小節)]
B展開部[主題展開(13から15小節)+移行楽節(16から18小節)+終結(18小節3拍目から24小節)]
展開部において、終結の前に移行楽節が配置される構成は、バッハのインヴェンションにおいても見られる構成である。バッハのインヴェンションだとしばしば終結に主題が再現されるが、本作品においては見られない。
主調はニ長調である。主題は1から4小節で、右手上声部おいては和音や重音よる厚み(重厚さ)や和声的明るさが感じられる一方、左手下声部では軽快な16分音符によるリズミカルな動きによって演奏される。主題全体の特徴として、音価は短く、長い旋律線ではないことから、朗々と歌うようなものというより、リズミカルな雰囲気が得られる。そして、この下声部16分音符のモティーフはその後8小節、16から18小節において形を変えて展開されている。
5小節目アウフタクトから7小節目は主題の展開であるが、ここで属調(イ長調)に転調している。
8小節から16分音符による反復的進行があった後に属調で終止を迎える。11から12小節では短い和声カデンツが付されている。この和声カデンツはトニック→サブドミナント→ドミナント→トニックの構成であり、和声的緊張のピークは実は12小節の2拍目にやってくる。12小節の旋律は全体として下行していくので、下行するラインは基本的にディクレシェンドしていくことが表現上の常套手段ではある。が、ここはその後21小節から長大な和声カデンツが展開されていくことを思えば、何らかの形で12小節での和声進行も表現することを考えてみるのも良いだろう。
13小節から15小節にかけては、主題モティーフの展開が行われる。15小節から主調ニ長調に戻る。16小節は音形のパターンから考えて、1拍目から3拍目頭のe音まででアーティキュレーションを区切り、3拍目二つ目のh音から4拍目終わりのh音までを一塊と考えることもできる。
17小節から18小節2拍目まで属音のオルゲルプンクト(保続音)が続き、緊張感が高まる。18小節3拍目より終結楽節となる。
22小節から24小節の3小節にわたって長大な和声カデンツが配置されている。これは三重カデンツであり、23小節1拍目和音は倚音a音が含まれたⅥ和音であるつまり22から23小節の頭で偽終止が形成されるのである。こうした和声変化を汲み取って表現すれば、よりこの和声カデンツも生命感に溢れたものとなるだろう。