岩間 稔 :ぼだい樹(ドイツ民謡)
Iwama, Minoru:
演奏のヒント : 大井 和郎 (656文字)
まず、学習者は、この曲の左手と右手を別々に練習し、どちらも暗譜をしてから左右を合わせることをお勧めします。我々の耳はついついメロディーの方に耳が傾き、左手が平坦になりがちです。
左手のライン(声部)を暗譜することで、練習やレッスンも楽になります。
例えば、左手の1~4小節間、1小節目、CHAと下行しますので気がつかれない程度にCからAへディミヌエンドをかけます。そして2小節目HAGisと更に下がりますので、1小節目よりも若干音量を落とします。
1小節目の最初の音がC、2小節目の最初の音がH、3小節目の最初の音はAですので、これも一段階ずつ下がることになりますので、3小節目のAは最も弱い音量からスタートします。しかし、次のCからは上行しますので、クレシェンドをかけていきます。そして最後のFは、前の音のEよりも弱く弾く といった具合です。
この時、3小節目の右手は3拍目から下行していますので、3拍目のEを頂点にして徐々に衰退しますが、左手は逆に少し上がって来ます。このような、両声部ともにリスペクトする考え方で演奏します。
5~6小節間、右手は上行形シークエンスで上がっていきテンションもあがりますが、左手も、ACAからHDHとこちらも上行形シークエンスですので、ここは左右同時に音量を上げて行きます。
7~8小節間、右手はC H A と下行しますのでディミヌエンド、左手もEの後は徐々に衰退します。
これは一例に過ぎませんが、学習者や先生のお考えを取り込み、たった8小節の曲でも、平坦にならないように注意して下さい。
解説文 : 熊本 陵平 (855文字)
たのしいポリフォニー1(ヤマハ出版)より出典。この教本においては、演奏レベルとしてバイエル習得程度の段階にある弾き手を想定した内容となっている。いわば、ポリフォニーのピアノ曲における導入的楽曲である。
本作品における技術的な狙いとしては、主に下声部(左手部分)のニュアンス付け
にある。
まずは1から2小節間で、上声部(右手部分)の主旋律で動きが少ない四分音符による同音反復が行われている中で、下声部では一拍目に四分休符があった後に下行順次進行の副旋律的動きが見られる。この四分休符が主拍にあるため、どうしてもバスの一拍目は欠損している状態で、このためにそのまま弾くと拍感が弱まって弾きづらい。そこで上声部の一拍目はしっかりと感じて打鍵すると良い。この1から2小節における下声部は、スラーが示す通り、滑らかなレガートが想定される。上声部では動きが少ないとはいえ、主旋律であるため、伴奏ではないので、上声部の主旋律を聞かせながら、下声部の旋律的動きも背景として聞かせるようなバランス感覚が必要である。
次に、3から4小節間における上下声での反進行はポリフォニーらしく両声部が独立しているように聞こえる進行となり、4小節では上声が付点二分音符で一時停止する中で合いの手のように下声は四分音符で補う動きとなっている。このように、一声部のみ単独で動いているような場合は、よりその動きに音色の変化をつけるなど、ニュアンスの工夫が望まれる。
最後に5小節以降の下声部の動きであるが、和音構成音だけで構成されており、あまり旋律的要素が単独では感じられない。しかしながら、音程的動きは上声3度上行と3度下行という山型の動きは相似しており、この2声は模倣に近い動きとなっている。このため、1から4小節に比べると控えめなニュアンスとはなるが、ここでも上声の主旋律に呼応する副旋律の動きと捉えた方が良いだろう。
全体の構成としては、一部形式。主題aに対して、終結bが後続し終止する。
主題a (1から4小節)+終結b (5から8小節)
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