楽曲構造は三部形式である。
A[a(1から8小節)+a1(9から16小節)]
B[b(17から28小節)]
A[a(29から36小節)+a2(37から45小節)]
主題の大きな特徴として、1小節単位での動きはあまりないが、複数の小節を塊として見た時、上行進行から開始され、やがて下行形によりフレーズが収まる。このように大きくは山型となっているが、主調G durの明るい響きも相まって、冒頭の穏やかな上行進行は素朴で前向きな表情が感じられる。バロック時代におけるフィグールの一種であるアナバシスを連想する。アナバシスとはギリシャ語で「上行」を意味し、音楽として喜びや希望といったポジティブな表現となる。
主題旋律部では前打音が多用されている。これは民謡による独特のうねり或いは田舎における鳥の囀りであろうか。また、伴奏部では開始音に完全5度が置かれているが、これはよくショパンのマズルカやバルトークの民族音楽的作品において使われる用法で、完全音程の硬い響きが民族音楽の力強さを引き立てる。こうした楽譜に書かれた様々な痕跡は、様々な情景を連想させるので、是非本作品を練習される際にはこうした個性的な特徴を一体なんだろう?と様々想像を広げてもらえると良いだろう。
B楽節に入ると、平行調e mollへ転調する。旋律線の動きがより短くなり、Aの大ぶりな動きとは対照的となる。反復的楽節なので、実は一つの和声カデンツの途中、Ⅳ→Ⅴと繰り返されるので、とても長いカデンツとなっている。スラーの終わりをぶつ切りにせず、横への流れを意識して弾かれると良いだろう。