プレリュード1 Allegretto (1960) プレリュード2 Andante (1961) プレリュード3 Allegro con spirito (1961) プレリュード4 Largetto (1960) プレリュード5 Allegro (1961)
佐藤が日本音楽コンクールに入賞した翌年、 1960年から61年にかけて書かれ、1962年に 発表。1965年にカワイ楽譜から出版されている。この頃の作曲者は師である清瀬保二の強い影響下で創作をしており、楽譜に掲載された解説によれば「ただ日本の素材にとらわれるだけ ではなく、“現代に日本の伝統をどのように発展させていくか” という課題」をもって作られたものだと言う。言い換えれば、清瀬から学んだことを活かしつつ、どのように自分の個性を形成していくのかという課題に向き合っていたのだろう。佐藤は後年、雑誌『あんさんぶる』 72号(1972年10月発売)に掲載された「清瀬保二の音楽語法」という記事のなかで、師の作品の特徴を様々な角度から説明している。そこで挙げられている「純粋な五音音階ではない清瀬風五音音階」 、「増音程を好む」 、「はっきりとしたドミナント進行の回避」 、「オスティナートを好む」といった傾向は、おおよそ本作にも当てはまるが、若干逸脱しているところに佐藤ならではの個性の萌芽が見られる。
第1曲は、変ロ音を主音としながらも(和声的な変化をつける17~20小節を除き)旋律以外も含めて第3音(レ)と導音(ラ)のない律音階によって作られている。第2曲は、おそらくドビュッシーの《ラモーを讃えて》を意識した作品で、主音はヘ音だが主和音の第3音を避けている。第3曲は、いくつかのオスティナートがブロック上に繋ぎ合わせられていく。中間部のように聴こえるセクションもあるが、そこでも主部と同じ音型が使われていることからも分かるように、単純な3部形式にならぬ工夫が施されている。第4曲は、嬰ハ音を主音とする民謡音階を核にした旋律が、単音、ユニゾン、そして2声、 3声と対位法的に声部を増やしながら発展してゆく。第5曲は、変ホ短調にはじまる無窮動のトッカータ。中間部のドローン上でで登場する 3連符と付点のリズムをもつ主題は、コーダで再び登場し、力強く曲を終える。