作品概要
出版年:1867年
初出版社:Breitkopf
献呈先:Germer
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:前奏曲
総演奏時間:33分30秒
著作権:パブリック・ドメイン
※特記事項:※ 『ステファン・ヘラー ピアノ曲集 I』(カワイ出版、2014)より出版社の許可を得て転載。 カワイ出版ONLINE:http://editionkawai.shop16.makeshop.jp/shopdetail/000000006072/
解説 (1)
総説 : 上田 泰史
(1120 文字)
更新日:2014年11月20日
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総説 : 上田 泰史 (1120 文字)
出版: Paris, J. Maho, 1867
献呈:Mlle Lili
「前奏曲」は、古くは調弦や指慣らしの曲、またはその行為を指したが、19 世紀前半にはそれ自体が独立したジャンルとなり、「前奏曲集」という着想のカタログと称すべきごく短い曲のまとまりとして成立するようになった。
本作は、ヘラーにとって3 作目の前奏曲集。技術的には平易に書かれているが、既に円熟の域に差し掛かったヘラーの風刺的センスが光る32 曲が収められている。今回はこの曲集から4 曲を収録した。「リリー嬢」の素性は不明だが、作品の難易度から見て恐らくまだ若い生徒か恩義ある知人の令嬢ではないかと推察される。
第4 番 アッサイ・レント イ短調
オペラのレチタチーヴォを描写した小曲。5 ~7 小節にはオーケストラ風の伴奏が入り、12 ~19 小節には歌唱的なパッセージが挿入される。「話される言葉」と「歌われる言葉」のニュアンスの違い、オーケストラと声のパートを意識して引き分けることがポイント。
第14 番 アレグロ・ヴィヴァーチェ 嬰ハ短調
狩りの情景。2 小節目に出る二分音符は典型的なホルンの音型。ホルンは2 本以上の楽器が森の数箇所で吹き交わしているものと見られる。実際、fの指示がある冒頭4 小節、pの5 ~12 小節は音による遠近法とでも言うべきもので、fは単に「強く」というよりは「近く」、pは「遠く」と解すべきだろう。“ritenuto”は“ritardand(次第におそく)”と異なり、「速度を抑えて演奏する」意であることに注意。強弱、テンポのコントラストを付けることで、短い楽曲の中に広大な森の拡りが喚起されるだろう。
第21 番 コン・モート ト短調
冒頭、和声の進行を探るようなアルペッジョは本来の意味での前奏曲らしい即興的なスタイルを示す。冒頭8 小節の分散和音は符桁で結ばれた3 つの音符をひとまとまりと捉え6/8 拍子のリズム感で、それ以降は3/4 拍子のリズム感で捉える。17 小節目からは打って変わって規則的な分散和音の中に鐘の音を思わせる長い音符が現れる。これらの音符は分散和音とはっきり区別し、鋭いアクセント付けによって引き立てられるべきである。
第30 番 アレグロ・マ・ノン・トロッポ ヘ短調
ユニゾンの主要モチーフは強打される全音符と弦楽器のピッツィカート風の8 分音符によって特徴づけられる。ひとつの指で押さえたまま他の指を動かすこの書法は、指を独立させる練習としてクレメンティ以来楽曲に導入されるようになった。ここでは指の独立という機能的な意図を超えて強迫観念にとりつかれたように繰り返されるモチーフが独特な雰囲気を創り出している。
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