タイトルの下に”Legato et souplesse de la main droite.-La main gauche chante”「右手のレガートと柔軟性 -左手は歌う」とこの曲の課題が書かれています。この曲の冒頭を聴いて、シューベルトの歌曲「糸を紡ぐグレートヒェン」にそっくりだと思う人は多いと思います。糸を紡ぐ糸車の回転する音が終始奏でられ、そこに歌が入ります。このアプシルの「糸を紡ぐ女」では、右手で糸車の音、左手で歌が歌われます。この歌は、「ああ、退屈だ。退屈だ。」と言っているような、イ短調の5音を主としたシンプルなメロディで、2度繰り返され、あっさり終わります。グレートヒェンは、10節にも渡って恋人への苦悩や激情を歌いますが、アプシルの紡ぎ女は、仕事に退屈した一コマを切り取られたようなもので、日常の生活に密接な音楽だと思います。