このエチュードは、冒頭表記にAllegro di molto と書かれています。最もアレグロで、 という意味で、つまりは速度を速くという事なのですが、このエチュードに限っては、テンポを遅くしてもそこまで雰囲気が変わったり重たくなったりすることはありません。ある程度、中学生以上の学習者であれば、多少テンポを落として綺麗に弾くことは十分可能です。
このエチュードの奏法は様々ではありますが、分析をすることでとてもわかりやすくなります。
筆者の分析は次の通りです。
A 1~17小節間
B 18~41小節間
A 42~70小節間
最後の、42~70小節間にはコーダがありますが、それがあまりクリアーではありません。この辺りは独自の判断にお任せします。64~70小節間をコーダと考えても間違いではないです。
いずれにせよ、Aセクション(1~17小節間)は、2つのフレーズに分けることができ、A1 1~8小節間 と、A2 9~17小節間になります。この2つのフレーズはピークポイントがそれぞれあり、A1の場合、6小節目、または、7小節目のいずれかになります。これは奏者の判断に委ねられます。
A2の場合、Cis-mollから始まりますが、13小節目は3拍子でありながら2拍しかない事にお気づきでしょうか。拍子記号の変更を書き忘れたか、ミスプリントか、わかりません。A2のピークポイントは、13~14小節間と思われます。15~16小節間、左手が3拍目において4分音符になりますね。ある種の終止形のように、ここで流れを止めるか、あるいは、逆にaccelrando をかけるか、これも奏者に委ねられます。17小節目は少しテンポを引っ張っても良いと思います。
このA1とA2のセクションですが、どちらの方がテンションが高いと感じますか?この2つのセクションの雰囲気を変えるようにしてみてください。
Bセクションは、3つに分かれます。B1 18~27小節間 B2 28~33小節間 B3 34~41小節間 になります。B1は、ゆっくりした歌で始まりますが(これは重要な音だけを抜粋して歌として聴かせた場合の話しです)、25小節目からテンションが段々たかくなり、ここもaccelrandoをかけて良い場所です。Bセクションなのですが、Aの素材がb-mollに転調されて出てきますね。
B3は再び、B1のゆっくりした歌が始まります。
2回目のAは、42小節目から始まりますが、50~53小節間をこのエチュードの最大ピークポイントとします。ここをピークに、ピッチは徐々に下行していき、最後のコーダに入ります。
この曲において、右手のメロディーラインで、1つの音符から棒が2本出ている音符に対しては、ハッキリとメロディーラインとして(歌のラインとして)、聴かせるようにします。左手も、アルペジオばかりではなく、例えば2小節目の4分音符であったり48小節めから副旋律が出てきたりする場所以外にも、メロディーラインが感じられるところは出しても構いません。
また、このエチュードは、メトロノームのように正確に淡々と進むのではなく、場所場所においてのテンポはかなり異なります。例えば歌のセクションが出てくる、18~21小節間であれば、そこまでテンポは上げないですし、逆に、歌がない部分は、テンポを上げてもおかしくないです。
即興的に弾くことがヒントになります。