このエチュードは、2つのメインのメロディーがあって、その2つの素材が交互に現れます。冒頭の表記は、Lamentoso con gran espressiione 悲しみを強い表現で とありますので、長調の部分でも悲しみの表現と理解します。
このエチュードの演奏で失敗例としては、メロディーラインのシェーピングが出来ていなく、ラインが硬く聞こえてしまう事が典型的です。例えば1小節目、冒頭のメロディー音のF は、付点2分音符で3拍目の E まで伸びます。このエチュードの素材となる2つの音ですね。 この時、このEの奏法に注意が必要になります。このEは、絶対にFと同じ音量、あるいはFよりも大きな音で弾かないことです。 2小節目、3拍目のメロディー音Eは、次の4拍目でFに解決します。このFを前のEと同じ音量、あるいはEよりも大きな音で弾かないことです。
同じく、5小節目、1拍目から始まるBes は、3拍目でAsに解決します。14小節目、2拍目左手の和音のトップ、As は、3拍目で G に下りて解決します。
これらの音(解決音)となる音は、前の音の音量と辻褄を合わせて音量を減らすようにします。1~14小節間では、それらの作業は比較的簡単にできると思います。ところがその先からが問題になります。
多くの音が加えられ、テクニック的にも難しくなってしまうと、ついついそっちに気が行ってしまい、解決音の音量に気を配れなくなる事がしばしば起きます。この曲に限りませんが、どんなに音量が大きくなろうとも、どんなに音数が多くなろうとも(例えば 53小節目)、基本のシェーピングは守られなければなりません。この点をご注意ください。