Tranquillo,Cantabileです。静かな心でよく歌い、味わって演奏しましょう。左手の伴奏がいかにもロシア的です。冒頭、2小節単位のフレーズは、5小節目から右手の上行形と左手の下行形により少しずつ広がりを見せながら、4小節の長いフレーズを作ります。まるで視界が広がっていくようです。9小節の2拍目からは、左手が休符になり、右手が独唱で高らかに歌われ、12小節目のmfのクライマックスにたどり着きます。ここから始まるたくさんの臨時記号のシャープは、雪の大地に反射する日光のように光を与えます。しかしながらそのクライマックスも、完全に澄み切らず、短三和音（Cm）で奏され、光と陰の移ろいを見せながら徐々に下行ラインを辿ります。24小節目2拍目から再び現れる右手の独唱は、今度はディクレッシェンドを伴い、心の内を告げる独白のようで、ラスト4小節全てに施された永遠に続くかのような「ミ」の連続に溶けていきます。