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松下 真一 :日本神話にもとづく6つの断章-ピアノのためのスペクトラ 第2番

Matsushita, Shinichi:Six Pieces sur les Mythes Japonais:Spectre pour piano,2

作品概要

作曲年:1967年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:★ 種々の作品 ★

解説 (1)

総説 : 仲辻 真帆 (1450文字)

更新日:2018年3月12日
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6つの断片から成り、それぞれ古事記の日本神話にもとづく標題がつけられている。以下、簡単にそれぞれの標題および楽曲について説明する。 I. Île d'Onogoro en ciel――オノゴロ島  オノゴロ(オノコロ)島は、日本神話に出てくる島である。イザナギ・イザナミが天の浮橋に立ち、矛で海を探り引き上げた際に矛先からしたたり落ちた雫で成った島。つまり、日本の国そのものを指す。松下眞一の作品では、ときおりかすかに響く小さな低音と速い音価で奏でられる高音が緊張感を醸し出している。 II. Le royaume 'Yomi' (sombre royaume) ――ヨミの国  黄泉は死後に魂が向かう場所、死者が住む国である。pppの低音部分が多く、きこえるかきこえないか、ただ張り詰めた空気のなかに確かな気配を感じる。 III. La Désse Amaterasu et son frère, Susano-o――天照大神とスサノオの尊  天照大神はイザナギの娘で日の神、スサノオは天照大神の弟。作曲者は ”La Désse Amaterasu”(天照大神) を ”Groupe A” と設定し、さらにそのA群を1、2、3…と5つに分けた。また、”Le Frère Susano-o”(スサノオの尊) を “Groupe B” として、B群をa, b, c…と7つに区分した。それぞれが掛け合わせられることにより、この曲が展開されてゆく。 IV. Histoire du royaume d'Inaba――イナバの国の物語  因幡は現在の鳥取県東部にあたる。『古事記』中の因幡の白兎に関する逸話はよく知られている。楽譜をみるとこの曲は1頁で終わっているが、広い音域を行き来しておりその運動量は大きい。 V. Histoire d'Umisachi et Yamasachi (le royaume sous-marin) ――海幸・山幸の物語(海底の国)  神話では、弟(山幸彦)が魚釣りに出て釣針を失い、その探索のために海宮に赴き海神の娘と結婚、釣針と珠を得て、最終的には兄(海幸彦)を降伏させるという筋書き。松下の作品において、各音はうねりのようでもあり、時には音の波が聞き手に向かって勢いよく寄せてくる。 VI. Descente des dieux du ciel (Tenson-Kôrin) ――天孫降臨  神話によると、ニニギノミコトが高天原から日向国の高千穂に降り立ったとされる。松下の作品では「六つの断片」の最後の部分であり、高音の細やかな音々が神秘的に響く。  以上の日本神話にもとづく6つの標題に関して、作曲者は、写実的・文学的な意味を付与したわけではない。ただ上記のような神話が背景とした民族的な雰囲気を纏わせようとしたのである。この作品を通してピアノの音色と技法への新しい可能性を追求した、と作曲者は述べている。  《日本神話にもとづく六つの断片》は、1967年3月27日、大阪で完成した作品である。ロワイヤン音楽祭(フランスの現代音楽祭)からの委嘱作品で、イヴォンヌ・ロリオにより世界初演された。(日本初版は1968年、本荘玲子による。)  1970年、楽譜が音楽之友社より出版された。緻密な楽譜を一瞥すると、容易には演奏できないように思われる。しかし、作曲者は丁寧に記号を書き入れており、音符や記号を読み解いてゆくと、弾き手は次第に神話の世界へと誘導されるだろう。

執筆者: 仲辻 真帆
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