<23.アンダンテ・ソステヌート>
わずか2分足らずの曲です。カバレフスキーの優しさが出ています。Andante Sosutenutoですので、時間をたっぷりとります。1-2小節目、rubato e ben cantandoと表示があります。1-3小節目のメロディーラインはまさにその歌ですので、たっぷりと音楽的に歌ってください。主題の最後2つの音(3連符の2個目と3個目)に、テヌートマーキングがありますね。他の主題も見てみると、ほぼ全ての主題の最後はテヌートマーキングがついています。ゆっくりと、やわらかく、この同じ2つの音を弾いてフレーズを終わらせます。
さて、主題と主題の合間に別の素材が入ってきます。3小節目3拍目から入る3声の素材です。これを素材Sとします。そして、同じ素材Sが8小節目の3拍目に入ってきますね。この3声の素材Sには興味深い特徴があります。
3小節目の3拍目から入ってくる1つ目の素材Sは、長3和音ではじまり、短3和音で終わります。この場合、FDAで終わっていますので、基本形はDFA。この曲はF-durですので、Viの和音になります。そうすると次の主題はその和音と同じ和音の和声音で始まり、Fで終わります。
1つ目の主題の最後と、2つ目の主題の最後を比べた時、一方はAFF、もう一方はGFFと終わっている事がわかりますね。そして素材Sはそれらをフォローするが如く、最終的に主和音FACで終わっています。
そこで演奏法の話になりますが、このAセクションにおける2つの主題は、今説明した通り、ムードが少し異なります。2つの主題のムードを変えて演奏します。そして素材Sを演奏する時、これ以下は出せないくらいppにしてください。はっきりしている歌の部分に対して、こちらはどちらかというとぼやけた感じが欲しいです。
この手の、ルバートを用いて自由に歌う曲で起こりがちなのがカウントの問題です。例えば3小節目、3拍目から素材Sが出ますので、きちんと3拍目まで数えます。5小節目も同様に数えてください。
Bセクションは11小節目から始まります。主題がオクターブになっていますね。少し躍動的(animato)になって構わないと思います。このBセクションは、次第にcrescendoをかけていき、冒頭の部分とは打って変わって徐々にappasionatoな感情になっていきます。テンポは前向きにして良いと思います。
そして再びAセクションに戻ります。素材Sは4声になる部分もあり、手の小さな人にはなかなか掴みにくい和音も入ってきますが、ポリフォニーの秩序を厳格に守ってください。最後はたっぷりと時間を取って終わってください。