ホーム > カバレフスキー > 24の前奏曲 > プレスティッシモ・ポッシビーレ

カバレフスキー :24の前奏曲 プレスティッシモ・ポッシビーレ Op.38-14

Kabalevsky, Dimitri:24 Preludes Prestissimo possibile Op.38-14

作品概要

楽曲ID:44226
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:前奏曲
総演奏時間:2分00秒
著作権:保護期間中

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1150文字)

更新日:2018年3月12日
[開く]

<14.プレスティッシモ・ポッシビーレ> 

この特別なプレリュードに関しては、様々な考え方があって良いと思います。恐らくこの24のプレリュードの中では最も技術的に難しい曲であり、技術面の問題をどのように解決していくかが、キーポイントになります。

表示記号は prestissimo possibile となっており、可能な限りプレスティシモでという恐ろしい表示があります。それでは、その「可能な限り」がどのような捉え方になるかで、このプレリュードのテンポが決定されます。最初に「様々な考え方があって良い」と言ったのはこのテンポのことです。

楽譜の1/3は1段譜で書かれています。そしてその1段譜に並んでいる16部音符は、旗の向きが上下に分かれており、下向きは左手が、上向きは右手が担当することになっています。もちろんこれは絶対守らなければならないというわけではなく、都合に応じてそれぞれの担当を変えることはできると思います。しかしながら、ここに書かれてある割り振りは実に適格であり、最も演奏しやすい工夫がされているとも考えられます。仮にこの譜面の通り、左右の手を振り分けて弾くとしましょう。

弾いてみると分かりますが、左右の手が入れ替わることにより、タイムロスが発生します。しかしながらこれをprestissimoで弾いた場合、明らかに犠牲になる事柄が出てくるのです。例えば、3-4小節間にDの音が2回リピートされますが、一つ目は左手、二つ目は右手になります。アレグロくらいのテンポならまだしも、prestissimoの場合、この2つのDがとても聴こえづらくなるか、あるいは、連打ができずに適当にごまかすか、という事態になります。

今のは1つの例にすぎません。特に粒ぞろいの問題を考えた時、prestissimoで演奏して、粒ぞろいを完璧にするなど夢に近いような、不可能なことなのです。 そこで皆さんに判断をお任せしたいのは、雑でもいいから表示記号に従って速く弾くほうがいいか、少しテンポを下げてももう少し丁寧に弾いたほうがいいか、という選択です。実は筆者は、この2つの両極端な例を聴いたことがあり、どっちもどっちというのが正直な答えです。それでは中間を取るとしても、それでも粒ぞろいの問題はそう簡単には解決しません。

外国のアーティストはもともとそのような細かいことを気にしない人達もかなりいます。カバレフスキー自身もそのような、正確な演奏を期待していないのではないかと想像しています。大事なことは、このプレリュードが作り出す独自の世界の表現です。それを最重要課題とし、そうなると、テンポは速いほうが望ましく、細かい音符の粒ぞろいよりも、3拍子の拍を感じることができる範囲以内であれば良いと個人的には思います。

執筆者: 大井 和郎

楽譜

楽譜一覧 (0)

現在楽譜は登録されておりません。