<10.ノン・トロッポ・アレグロ、マ・アジタート-レチタンド、ルバート>
このプレリュードは、魑魅魍魎という言葉がぴったりと当てはまる、極めて不気味なプレリュードです。即興的な演奏もありだとは思いますが、その前に必ず、拍を認識し、リズム通りに弾いてから(リズムを理解した上で)即興的に弾いてください。このプレリュードは特別に気をつけなければならないことはそれほどありません。楽譜の指示通りに弾いていればほぼ間違いなく曲は完成します。
それではその他、この曲の注意点を箇条書きにしてみます。
◉ 3-6小節目、19-23小節目はこのプレリュードの技術的な難関部分です。オクターブは左右ズレることなく、正確に弾けるように練習してください。地道な練習が必要な部分になります。
◉ 7-10小節目、全音符のタイは右手で押さえておき、ペダルは全く使わずに、左手のスタッカートを守ってください。10小節目、よく数えて、そしてそれにフェルマータをかけますので、このオクターブのGisはかなり長い間伸ばされることになります。
◉ 11小節目、これ以下はでないくらいのpppでスタートします。実に不気味な部分で、18小節目のフェルマータをゴールと考え、徐々にcrescendoをしていきます。
◉ 16小節目1-3拍はペダルを踏みっぱなしにします。濁っても構いません。18、27、29、31、34も同じマナーです。
◉ 21小節目、3拍目より16分の3連が始まります。何も強弱記号は書いていませんが、ppから始めると良いでしょう。
◉ 23小節目、見慣れない irato という表示が書かれています。「怒りを持って」という意味で、極めて乱暴に、大きな音で弾きます。故に、24小節目のトリルは、最初の音であるHisが誰の耳にもはっきりと聞こえるように弾きます。
◉ 38小節目カウント注意。3拍子になるように3連符の速度に気をつけます。
◉ 41小節目、Cis mollの主和音(Ⅰ)を誰にも聴かれないように弾いて、余韻のみを44小節目(最後の小節)まで残さなければなりません。この時、左手を指示通りにpで弾くと、和音を弾いた瞬間がわかられてしまいます。かといって、その和音をppで弾くと、最後の小節まで音が伸びずに途中で消えてしまいます。この部分は、多少、左手の3連符の最初の音であるAを大きく弾き、和音を弾いたことがバレないようにしてください。