<7.アンダンテ・ノン・トロッポ>
カバレフスキー独特の美しい旋律から始まります。カノン的に書かれていますが、完全なものではありません。しかし、独立された2声で始まります。奏者はポリフォニーの秩序を守るべく、声部を独立させ、2声を異なった音色で弾くようにします。主題は、4小節目から始まる右手です。これは実に長い主題で、終わるのは10小節目の3拍目のAで終わります。これとほぼ同じものが16小節目からも始まります。
さてこの曲なのですが、音楽的に説明をすると、「2つの異なった世界」があると考えて良いと思います。1つはとても現実的で単調です。もう1つは完全なる夢の世界です。それらが交互に現れます。それを分析すると: 1-10 現実 11-13 夢 13-22 現実 23-25 夢 になります。それぞれのムードを異らせてください。夢の部分においては、常にppで弾くことが要求されます。どんなに層が厚くなっても、音符がたくさん書いてあってもppを保ってください。以下、箇条書きで注意点を述べます。
◉ 冒頭3小節はテンポが速くなりがちです。テンポは11小節目など、音符の多く書いてある小節を弾いてみて、そこで無理のないテンポを基準とし、1小節目に合わせます。最初は慣れませんが徐々に慣れてきます。
◉ 43小節目、上声部のメロディーを優先します。4小節目の左手の1-2拍目の音形が、後の夢の部分に使われます。
◉ 9小節目の左手はムードが変わるところです。表現を強くして良いでしょう。
◉ 11小節目、3拍目の左手バスのFisを残したいところですが、Eisが入ってきますので、どうしてもペダルを切り替えなければなりません。5連符の部分は短2度の上行形で、この小節を例にとりますと、Eis-Fis Eis-FIs という音形になります。もちろんFisはレゾルーションですので、Eisよりも大きくしないようにします。
◉ 16小節目で再び主題が出てきますが、4小節目よりも多くの声部が関わってきます。それだけ音量を上げて構いません。22小節目がピークポイントになりますので、そこへ持っていくようにします。
◉ ミステリアスであることを常に忘れないようにします。楽天的でもなければ悲観的でもありません。物語の中に神秘的な世界が広がりますがテンションの高いものでもありません。