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カバレフスキー :24の前奏曲 アレグロ・モルト Op.38-6

Kabalevsky, Dimitri:24 Preludes Allegro molto Op.38-6

作品概要

楽曲ID:44218
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:前奏曲
総演奏時間:1分30秒
著作権:保護期間中

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1635文字)

更新日:2018年3月12日
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6.アレグロ・モルト

テクニック的になかなか手ごわいプレリュードです。まずこのプレリュードを弾けるようになるためには、左手がしっかりしていなければなりません。左手は、鍵盤上でかなり低いレジスターを担当します。重たい鍵盤の位置で、速い動きを要求されます。

楽譜をご覧になればわかりますが、左手3連符で、3つの音の最後の音は1の指が担当する事が圧倒的に多くなります。ですから3つ目の音はさほど問題になりません。ところが1つ目と2つ目は4ー2 とか 5ー2、5ー3が担当しますね。これらの指は確実に鍵盤の奥深くに入ってないと、速度を上げた時「音抜け」が生じます。左手を単独で部分練習をしなければなりません。

1小節目を使って部分練習法を教えます。1拍目、最初の3連符である、HDFisを例にしてみましょう。Fisは1の指ですので、1の指をFisにおいてそのまま置きっぱなしにします。その状態で、Fisを離さず、残りのHとDのトレモロを行ってください。力が入らないようであれば、速度をうんと落としてください。力が十分入れられる速度まで落としたら、そのままトレモロを続けてください。どんなにゆっくりのテンポでも構いません。指の形には気をつけて、伸びきっていたりしないように。

この練習を全ての和音に行う事で、音抜けがなくなります。全ての和音といっても、不得意なものだけを行えばいいのであり、弾ける和音は抜かします。1つ目のHDFisを練習した事により、すでに2-4の指は強くなっているはずですので、他の和音にも効果が現れます。

8小節目以降は3連譜の最初の音がオクターブになります。最初は右だけですが、後に左もオクターブが加わります。この場合、オクターブ以外の2つの音が緩みがちになります。練習方法は、先ほどと同じく、オクターブを抑えた状態で残りの2つの音をトレモロにします。

進んでいくうちに、「ちょっと不可能ではないか」と思われる箇所が出てきます。17-19小節目です。17はまだいいとして、18-19の僕の指番号を書いておきますので参考にしてください。18小節目の右は、123532 123532 左は、532123 532123 です。19小節目の右は、124521 左は、521135 で、これ以降(3つ目の3連符以降)は通常に戻ります。さてこの、19小節目の指番号では、当然、in tempoで弾く事はできません。ある程度時間を取っても構いません。音楽的にもここはBroading(ブローディング=ある部分のテンポを若干ゆっくり目にして音楽を大きく聴かせること)にして良い部分です。22小節目も19小節目と同様に考え、指番号を考えてみてください。24-25もブローディング、29もブローディングして構いません。

音楽的側面の話では、メロディーラインのシェーピングが議論となるかもしれません。主観的な話になってしまいますが、ロシアの音楽は、「長い音符に向かっていく」という性質があります。6小節目の最初の2分音符で書かれているHの音は、2小節目の最後から始まる主題の最後の音になります。通常の音楽では、最後の音は、特に今のように下行して終わる場合、力を抜く事が多いのですが、僕の個人的な主観から言いますと、このHに向かってフォルテで終わる終わり方が適切だと考えています。これは主観ですので、正しくも間違っているもありません。参考までにしてください。

メロディーラインは結果、同じ指で弾くことになりますので、横にスムーズに流れるようにではなく、多少乱暴でも、マルカートではっきり、重々しく、弾きづらそうに、しかし速く弾くことを心がけます。

曲の性格の話になりますと、この6番のプレリュードは、カバレフスキーのものすごいエネルギーが凝縮されているプレリュードで、大きな音量が不可欠となります。一瞬の緊張の緩みがあってはいけなく、わずか1分強の曲ですが、最後までテンションを高く保ってください。

執筆者: 大井 和郎

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