この24のプレリュードの中では、最もスケールの大きいプレリュードです。このプレリュードを演奏するにあたり、注意することは3つあります。
1 バランス
ben tenuto il tema と冒頭に書いてある通り、メロディーラインはハッキリ出すのですが、その他の右手の和音が大きすぎてしまう演奏が多くあります。右手のテーマ以外の和音は、あくまでスパイス的な役割であり、メロディーラインより大きくなってはいけません。メロディーラインはそれで無くても、単旋律から始まり、オクターブになっても、その他の声部の方がよほど音数は多いですね。下手をすると訳が分からない曲になってしまいがちです。バランスはしっかりと確保しましょう。右手のテーマ以外の和音は、pやppでも良いと思います。
2 バスを切らない
例えば5小節目、1~2拍間、バスは2分音符のHですが、メロディーラインは、G Fis G A と、普通にペダルを踏み続ければにごりが生じます。しかし、にごりが生じたとしても、バスが無くなるよりは筆者はマシだと思っています。多少のにごりなど気にせずに、バスを十分伸ばしたい曲です。故に、ペダルはバスに合わせて(バスが変わるまで踏み続けて)ください。
3 弾きにくそうに弾く
この曲こそ、メトロノームのように正確に進んではいけません。前半はともかく、後半、特に37小節目以降、pesante, allargando, sostenuto, とあらゆる理由を付けてテンポを遅く、音量を大きく、そして「弾きにくそうに」弾きます。さらっと弾いてはいけません。そのような「弾きにくそうに弾く」ことで、さらなる雄大さ、スケールの大きさ、を表現できるからです。39小節目の16分音符のオクターブにしても、さらっと弾かないこと。40小節目以降、徐々にテンポを落として、体のジェスチャーも大げさにします。つまり、例えば、38小節目のような場所が、簡単に弾けたとしても、簡単に弾かないようにします。
このプレリュードは、どれほど雄大さ、スケールの大きさを表現できるかが伴になります。このプレリュードの一番最後の音、D、はこれ以上出ない位大きな音で弾いてください。