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カバレフスキー :24の前奏曲 アンダンティーノ Op.38-4

Kabalevsky, Dimitri:24 Preludes Andantino Op.38-4

作品概要

楽曲ID:44216
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:前奏曲
総演奏時間:2分00秒
著作権:保護期間中

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1415文字)

更新日:2022年11月29日
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実に謎が多いプレリュードです。筆者は今、4/8という拍子が書かれている版を見ています。

ネットで他の版も探してみましたが、これが2/4拍子に書き換えられている版もありました。この曲が4拍子であるか、2拍子であるかによってもテンポが大分変わってくると思います。

これだけではなく、筆者の見ている版には、51小節目で戻ってくるAセクションに、Tempo 1と書かれています。Tempo 1と書くからには、その前のテンポが変わる指示があるはずなのですが幾ら探しても見つかりません。譜面上に書かれているマーキングはこのTempo 1を除き全て強弱関係の表記になります。

Tempo1 の前は、Tempo1よりも遅かったのか、速かったのか、を考えたとき、筆者の中で、Tempo1よりも速いという事は決して無いと断言できます。それは38小節目辺りから始まる32分音符や、5連符などの、多くの音を弾かなければならないと考えたとき、Tempo1よりも速いというのは音楽的な側面で不自然を感じるからです。

そこで、先ほどの4拍子であるか、2拍子であるかという推測から話しが始まるのですが、速度表記はAndantinoと書かれていて、さらに話しを厄介にさせます。 Andantinoとは、もっとアンダンテというイタリア語の意味があり、もっととは、andanteよりも速いのか、遅いのか、実に曖昧な言葉だからです。日本では一般的にAndantinoはAndanteよりも少し速くという意味で知られていますので、そうと仮定してお話をします。

この曲が4拍子であって、Andanteよりも少し速い曲としましょう。それでもテンポはかなりゆったりなテンポになるはずです。4拍子であれば8分音符=80~90の間で進めると思います。この場合、8分音符=80であれば、巷に存在するレコーディングよりも遙かに遅いテンポになります。

2/4拍子という版もありましたが、筆者はわざわざ書かれたであろう、この、4/8を信用したいと思います。そしてテンポは先ほど述べた通り、80~90の間の設定で良いと思います。

そして中間部のBセクションのテンポはブローディング(テンポを遅くすると言うこと)をかけ、あまり軽々しく、軽快に弾くのではなく、むしろ、テンポを落とし、大変な苦労をしている位に、「弾きづらそうに」に弾くことがヒントになるのではないかと考えます。

47小節目に至り、32分音符は無くなりますが、1つのストーリーが終わるべく、ディミヌエンドをかけ、テンポを更に徐々に遅くし、消えていくという書法が、つまりは50小節目に至って初めて裏拍に音が無くなるということが、テンポを遅くして消えていく描写を意味すると考えます。

その遅いテンポを元に戻す為のTempo 1であると思います。

そしてこの曲は冒頭にcantandoと書いてありますね。機械的に無感情で弾くのでは無く、歌の部分はタップリと歌い上げてください。

この曲のAセクションは、人に物語を話してあげるような、単純で、わかりやすい素朴なメロディーから始まりますね。最初は平和に始まるストーリーが、中間部で徐々に緊張感と、行き所の無い圧迫感、気が狂いそうになるような激しい展開になり、再び静寂が訪れる、最後は架空の話しから抜け出すことが出来、ストーリーの語り手に見事に別世界に連れて行かれたという、一瞬見る悪い夢のような曲とお考えください。

執筆者: 大井 和郎
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