近藤 譲 :クリック・クラック
Kondo, Jo:Click Crack
総説 : 須藤 英子 (394文字)
東京芸術大学在学中より、気鋭の作曲家として頭角を現した近藤譲(1947-)。大学卒業後の1973年より、自身が「線の音楽」と呼ぶ独自の方法論による作曲を開始。以来、その洗練されたユニークな思想と音楽をもって、常に第一線で世界的な活躍を続けてきた。作曲家・高橋悠治により委嘱・初演された『クリック・クラック』は、「線の音楽」最初期の作品であると同時に、作曲者初のピアノ独奏曲である。「曲の構造全体すべてを一本の旋律的線から導き出す」という、まさに「線の音楽」の思考法から導き出されたこの作品。ここではさらに、時にピアノの鍵が無音のまま押さえられることによって、一本の線から導き出された旋律が、倍音による微かなハーモニーに彩られていく。淡い弦の響きに耳を澄ませ、シンプルな音の流れに身を委ねる“傾聴”の行為。その“傾聴”を促す仕組みにこそ、「線の音楽」が目指す近藤作品の真髄があると言えよう。