これはアプシルがまだトーナル(調性)だった頃の作品です。これまでに多くの著名な作曲家が「田園」というタイトルで曲を書いていて、それぞれ大変興味深いところです。この作品もアプシルらしさが出ている作品ですが、彼のフレーズの癖として、17小節目、右手の1拍目の音形、18小節目1拍目右手の音形、24小節目1拍目右手の音形は、典型です。この音形は平坦になりやすい音形ですので、適度なシェーピングをしてください。
さて、1つ目のヒントとなりますが、強弱記号に注目してみてください。1つの小節に、高さの異なった強弱記号が見られますね。1つの小節に、同じ場所に高さの異なった強弱記号があり、異なった種類の強弱記号であれば話しは判るのですが、同じ強弱記号ですね。アプシルの細やかな拘りと考えます。故にこの曲を演奏するとき、勿論、平坦になってはいけないのですが、「セクション毎の強弱」をハッキリさせます。
つまり、1小節目に付けられているフォルテは1ー2小節間、3小節目に付けられているピアノと、4小節目のピアニッシモは7小節目まで続きます。勿論音符が細かくなればなるほど音量は上がってしまいますので、2小節目の16分音符を極端にフォルテでは弾かないものの、次の3ー7小節間とは明らかに異なるように演奏することがヒントです。
2つ目は形式をよく把握しておきましょう。形式はABAです。
1-6小節間 前奏
7-20小節間 A セクション と考えます。このセクションのピークポイントは、15-17小節間になります。
21-32小節間 Bセクション と考えます。ここでは、21ー22小節間と23ー24小節間がシークエンス、25ー26小節間と27-28小節間がシークエンスと考えます。それぞれ強弱や音質で違いを付けましょう。
33-45小節間 A セクション と考えます。
46-49小節間 CODA と考えます。
注意点:この曲の注意点としてペダリングの難しさがあります。まずどうしても工夫して欲しいのは、7小節目のような箇所です。筆者の版は、ペダルマーキングが1小節1本で付けられています、つまりは途中で変えません。しかしながら、この小節は1拍に1つ、1小節内に2つの異なった和音があります。そのため、ペダルを踏み続ければ濁りが生じます。だからといって、2拍目でペダルを変えてしまうと、バス音を失います。そこで、2拍目でハーフペダルを使用し、にごりを避けながらバスを残すようにしてみてください。
同じような箇所で、15小節目、16小節目もハーフペダルが必要と思ったらそのようにしてください。ペダルマーキングが2拍分踏み続けるように書かれているのは明らかにバスを失いたくないからです。バスを失わないことを最優先し、その上で、にごりが気になるようであれば、ハーフペダルを使用してみてください。