3曲の小品から成る曲集。1900年代初頭に起こったカタルーニャ・ルネサンス (ラナシャンサとも呼び、カタルーニャ地方の文芸復興運動を指す) に影響を受けている。曲集名は中世末期頃に流布していた祈祷書に由来しているが、作風としてはグラナドスが好んだロマン的傾向がみられる。3曲全てに標題が付けられ、特に2曲目の「ナイチンゲール」、3曲目の「苦しみ」というテーマは、ピアノ組曲《ゴイェスカス》にも登場する (「ナイチンゲール」は〈嘆き、またはマハとナイチンゲール〉、「苦しみ」は〈愛と死〉において想定されているテーマである)。また後に組曲から改作されることになる歌劇《ゴイェスカス》の第1幕第3場の展開が、すでにこの小品集に現れているとも考えられる。楽譜は1912年に出版され、1913年3月23日バルセロナにて初演された。所要演奏時間は約7分。
1. 庭で En el jardín
ヘ長調。4分の3拍子。アンダンテ。
音の跳躍が少なく、弧を描くようななだらかな動機が特徴的である。同時代に作曲されたピアノ小品と同様、ショパンやシューマンらに影響を受けた作風である。
2. 冬に (ナイチンゲールの死) En invierno (La muerte del ruiseñor)
ホ短調。4分の4拍子、4分の2拍子。ウン・ポコ・アド・リビトゥム。
3部形式のこの曲は、全体を通して不吉で重々しい曲想である。左手に現れるシンコペーションのリズムは、刻々と時を刻んでいくように繰り返される。「ナイチンゲールの死」と表記された下降動機がアド・リビトゥムで奏でられ、消えるように曲が閉じられる。
「ナイチンゲール」はグラナドスが好んで用いた素材であり、この点でピアノ組曲《ゴイェスカス》中の1曲、〈マホとナイチンゲール〉との関連が認められる。
3. 苦しみのなかで Al suplicio
4分の4拍子。レント。
1曲目にみられたような旋律線はなく、和音とそのアルペジオによって成り立っている。これは、前曲で死んでしまったナイチンゲールを弔う鐘の響きを表現したものである。
すなわち、この楽曲もピアノ組曲《ゴイェスカス》中の〈愛と死〉に関連していると考えられる。