ロ短調 2分の2拍子 Lento , ma non troppo
デンマーク人の作曲家、ルイス・グラスに献呈。
パルムグレンは第一次大戦勃発の際、ドイツに滞在中であったが、当時ロシアの支配下にあるフィンランド人は敵国者と見なされ、ドイツより退去を余儀なくされる。その後約三年間スウェーデン、ノルウェー、デンマークで演奏活動を行いつつ作曲の筆を進めている。ルイス・グラスとは、1915年から1916年にかけての冬にコペンハーゲン滞在中に知己を得ている。
1916年9月にパルムグレンはフィンランドに帰国し、同年11月14日、ヘルシンキ大学講堂において開催された演奏会で作曲家自身により初演。
曲の構造はA(1〜20小節)—連結部(21小節〜24小節)—A`(25小節〜49小節)。主題は(1〜10小節)ロ短調に始まり、(11〜18小節)イ長調、(19〜20小節)ニ長調に転調。連結部(21〜23小節)ニ長調、(24小節で主調に回帰)、A`(25〜32小節)ロ短調、(33小節〜49小節)同主調ロ長調で終結。
伴奏に高音域のソプラノ・オスティナートの手法を用いる。パルムグレンの三十代以降の作品に頻出する手法である。和音の推移によりもたらされる色彩感の変化に、作曲者独自の洗練された和声感が表出している。静謐さが曲全体を支配する。