メンデルスゾーン : 無言歌集 第2巻 「ヴェネツィアの舟歌 第2」 Op.30-6 U 110 嬰ヘ短調
Mendelssohn, Felix : Lieder ohne Worte Heft 2 "Venezianisches Gondellied II" fis-moll Op.30-6 U 110
作品概要
解説 (1)
演奏のヒント : 大井 和郎
(1695 文字)
更新日:2018年3月12日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (1695 文字)
6. ヴェネツィアの舟歌
この曲で最も説明がしづらいのはテンポの問題かと思われます。この曲が速すぎた 場合、全てはとても軽々しく、素っ気なく聞こえてしまいます。一方、遅すぎると今度は重たくなります。付点4分音符=60前後が適度な速度でしょうか。
この曲は大変奥が深く、演奏法によって大きく変化する曲です。順番に説明していきましょう。3-4小節間に出てくる右手の2つの音(Eis-Gis)がこの曲の動機になります。これは後に出てくるメロディーラインの最後の部分ですが、楽譜に書いてある強弱記号のように、Eisを大きく、Gisを小さくします。Eisの音を聴き続け、消えていく音にGisの音量を合わせます。とても衝撃的な気持ちが、湖上の波のように徐々に遠ざかって消えていく心理描写かもしれません。6小節目から歌の部分が始まります。6小節目から始まり、14小節目までが1つの括りだと考えます。そうすると、そこまでの8小節間(6-14小節間)は、6-10小節間が1つのフレーズで、11-14小節間がもう1つのフレーズと考えます。
最初の6-10小節間をご覧下さい。7小節目にCisに達すると、9小節目の1拍目まで、何と5つものCisがメロディーラインに現れます。この5つのCisを全て同じように弾くと、もうその時点でこの曲の魅力が失われます。この5つのCisは絶対に平坦にならないようにします。ではどうすれば良いかという話になりますが、筆者であればまず、最初から3つのCisを1つのグループと考えます。
1つめのCisは小さく始め、8小節目1拍目の3つめのCisに向かい、この音を最も大きく弾きます。
そして1度音量を落とします。残り2つのCIsは殆ど音量は要らないと考えます。強いて言えば、9小節目でメロディー音は最高音のAに達しますので、残り2つのCisはその準備と考えて良いと思います。故に、6-10小節間では9小節目に最も音量が出るように持って行きます。
次に10小節目から14小節目ですが、6-10と10-14を比べたとき、実際に音量的に大きいのは後者の10-14と筆者は考えますので、13小節目に最も音量を強く持って行きます。
話は前後してしまいますが、今度は左手の話をします。1小節目から左手の動きを見ていると、これはアルペジオであり、単純に伴奏形に過ぎませんが、5-6小節目をご覧下さい。これは果たしてメロディーと言えるかどうかはわかりませんが、この部分だけは「旋律に近い」動きをしますね。
これと同じ事が13-14小節間に同じく左手に起こります。
ちょっと先も見てみましょう。31-32小節間にも出てきますね。以上3回、曲中で左手が旋律的になる部分がありますが、この3箇所には実は共通点があります。この旋律的な左手は、「必ず右手がEis-Gisの動機を演奏した後」に出てきます。大変抒情的、感情的な部分で悲しみに溢れていますね。この部分はたっぷりと歌います。左手の1の指でトップの音を出します。
21小節目より中間部のメロディーが出てきます。2小節単位のシークエンスで上行しますね。29小節目をゴールにして徐々にクレシェンドをかけテンションを上げていきます。33小節目の右手に長いトリルがあります。典型的な失敗としては、このトリルを「同じ音量・同じ速度」で弾いてしまい、平坦で機械的になってしまうことにあります。この長いトリルはまずpから始まり、徐々にクレシェンドをかけ、トリルの数を増やしピークに達したら、今度はトリルの数を減らしながらディミニュエンドをかけます。
コーダは43小節目の2拍目最後の和音から始まります。和音のトップは次々と下行していますが、音量はクレシェンドをかけて45小節目に達します。何か不安な心理状態が徐々に増していく様子です。
曲全体を考えた時、拍子は6/8ですので、余計なところで時間を取ることはそんなにありません。
テンポは忙しくなく、かといって重たくなく、自分の中で自然な流れで弾けるテンポを選んで下さい。左手伴奏形は基本的にはppにして、右手のボーカルラインを際立たせます。
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