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ショパン :ポロネーズ 第1番 Op.26 CT150 嬰ハ短調

Chopin, Frederic:Polonaises Polonaise No.1 cis-moll Op.26 CT150

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ポロネーズ
総演奏時間:9分30秒
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解説 (2)

執筆者 : 岡田 安樹浩 (1195文字)

更新日:2010年2月1日
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1.ポロネーズ第1番 嬰ハ短調

1835年夏、ショパンはドレスデンを経由してライプツィヒへ向かった。当地でゲヴァントハウス・オーケストラの指揮者に就任したメンデルスゾーンに会い、彼を介してシューマンと出会ったショパンは、この時、楽譜出版の最大手ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社を訪れた。そして同年に作曲した『2つのポロネーズ』Op.26が、ドイツではブライトコプフ社から出版されることとなった。

Op.26-1は前半が嬰ハ短調、後半は異名同音を主音とする長調、変ニ長調をとっている。この調性関係は、数年後に『前奏曲』Op.28-15(通称「雨だれ」)においても用いられる。同じ音を主音としながらも、シャープ4つの短調とフラット5つの長調が、楽譜の上で対照的なイメージをもたらすため、多くの作曲家が好んで用いた。

この曲からは、以前の習作ポロネーズに見られたような、若さゆえの技巧的な、悪く言えば表面的な側面は感じられない。そこに見てとれるのは、ショパンがウィーンやパリで身につけた作曲技術の向上である。

冒頭4小節は、単なる前奏とみなされるか、祖国での11月蜂起鎮圧への悲痛な思いなどと重ねて解釈されがちだが、そこにこの曲を構成する基本的な要素が凝縮していることを見逃してはなるまい。32分音符で奏される順次下行音型と、裏拍で打ち鳴らされるホ音の連打がそれである。まず、嬰ハ音から重嬰ヘ音へ向けての減5度下行を反行させることで、嬰ニ音からイ音へと、刺繍音をともないながら上行する旋律が生み出される(第5-6小節)。続いて嬰ト音から嬰ニ音へ、8分3連音符で完全5度上行する(第7-8小節)、といった具合に、この楽曲の前半部分を支配する上行旋律は、すべて冒頭の旋律から生み出されているのである。さらに、前半の嬰ハ短調部分の中間楽想としてあらわれるホ長調の主題は、下行する旋律線の背景に属音が絶え間なく鳴り響いている(第34小節以下)。

後半は変ニ長調をとり、穏やかな楽想へと転じるが、半音階進行を多用することで和声的な緊張度を増している。上声の旋律には、即興演奏を思わせるような細かな装飾が施される一方で、バス声部にあらわれる特徴的な半音階下行(第54-56小節、および第59-61)は、主部冒頭の半音階化と解釈してもよいだろう。中間楽想では、下声にも旋律的、装飾的なパッセージが挿入され、技巧的な欲求を満たすことを忘れないのもショパンらしさと言える。本来楽曲は変ニ長調で閉じられており、ダ・カーポによる単純な3部分形式を排していた。これはシュレザンジェ版にもブライトコプフ版にも共通している。それにもかかわらず、後の出版楽譜では、ショパンの他のポロネーズの様式と一致しないという理由からダ・カーポを付し、嬰ハ短調部分を繰り返すものとした。今日、この作品の終止を如何に解釈すべきは、再考の余地があろう。

執筆者: 岡田 安樹浩

演奏のヒント : 大井 和郎 (2098文字)

更新日:2018年3月12日
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