作品概要
解説 (1)
解説 : 上田 泰史
(931 文字)
更新日:2010年1月1日
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解説 : 上田 泰史 (931 文字)
Deux Nocturnes Op.48
この二曲のノクターンの作曲時期は研究者によって見解が異なるが、1840年か41年に作曲され、初版はパリ(M. Schlesinger, 1841)、ライプツィヒ(Breitkopf und Hartel, 1842)、ロンドン(Wessel & Stapleton, 1842)で出版された。弟子のロール・デュペレ嬢に献呈。自筆譜は見つかっていない。二作ともオペラの影響を色濃く反映した傑作である。
第14番 嬰ヘ短調
第2番も第1番同様に3部分(以下A, B, A’)からなり、オペラ的特色が顕著である。嬰ヘ長調、嬰ヘ短調、嬰ハ長調ともつかぬ短い導入のあと、ギターの爪弾きを連想させる左手の音型にのってセレナード風の旋律が奏でられる。主題は例によって繰り返され、その際にオクターヴや装飾が加えられて変奏される。
セレナードが終わると「モルト・ピウ・レント」と記された変イ長調のBに入る。ここで5連符と6連符によって表現されるレチタティーヴォ風の音型が導入される。このような扱いは、ショパンのノクターンにおいて他に例を見ない。「レチタティーヴォ」担うのは、音域的にテノールであろう。ショパンは実際、彼のお気に入りの弟子で友人だったA.グートマンにレッスンをつけているとき、この中間部を「レチタティーヴォのように弾きなさい」と述べ、さらに「暴君が命令を下し(これが最初にある二つの和音の意味であった)、相手はお慈悲を乞うているのです」 と言ったという。これはグートマンの証言である。
さて、A’ では再び冒頭のセレナード風の旋律が戻ってくるが、コーダでは半音階進行の和声が旋律を下方へと追いやり、「セレナード」の最低音cisにまで追いやる。そうかと思うと、最後の2小節で最高音のaisまで一気に駆け上り、嬰へ長調で曲を閉じる。
¹ ジャン=ジャック・エーゲルディンゲル『弟子から見たショパン―その教育法と演奏美学』(Jean-Jacques Eigerdinger. Chopin vu par ses eleves, 3rd edition, Neuchatel, 1988)、米谷治郎、中島弘二訳、東京:音楽之友社、2005年。
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