・楽譜史料
クーラウの「助手」で将校(Officer)のアントン・パウリ・ウィルヘルム・ニコライ・カイパー(1796-1861)の筆写譜第2巻『ピアノ小品、ワルツ、カノンなどの1冊、殆どがクーラウの作品』に所収。第1葉の裏に1818年9月20日と記されている。印刷譜はヨルン・L. バイムフォールの博士論文『フリードリヒ・クーラウのハ長調の協奏曲とピアノソナタ』(ハンブルク、1971年、楽譜巻18頁)楽譜の付録の巻18ページに印刷譜として掲載されている。
ワルツの最後の8小節は、クーラウの最初のオペラ《盗賊の城》のNo.13/14のカミロのアリア〈勇気は無いが、死んでしまいたい〉の引用である。さらに伴奏も同じである。クーラウは自らの作品の引用をする習慣がなかったので―例外的に《コペンハーゲンの魅力》作品92があるが、これは他の作曲家と自作を並置するためである―このワルツが彼の真作であるかどうかは疑わしい。作品にクーラウらしいオリジナリティが見られないこと、作曲時期の推定が全くできないことから考えて、恐らくカイパーの作であろう。