本作はごく短い7曲からなる曲集だが、このうち6曲が下に示す初版として刊行され、残る一曲は筆写譜としてのみ今日に伝えられている。
・初版譜の詳細
F.クーラウによるピアノフォルテのための6曲の新しく易しいスコットランドの踊り、コペンハーゲンのC.C.ローセ社、1812年、折りたたみの横長版。表紙:4つ折り(活版印刷)、楽譜:裏面1頁に6曲が印刷されている(彫版印刷)。出版されたこれら6曲については、『アドレッセ』紙1812年8月12日号の補遺に広告が掲載された。
・筆写譜について
本作はクーラウの「助手」で将校(Officer)のアントン・パウリ・ウィルヘルム・ニコライ・カイパー(1796-1861)が筆写したクーラウの曲集『クーラウのピアノ作品第1巻』に収録されている。第1冊には「ゲフレ(Gefle)で作曲されたピアノフォルテのためのロンド」(21ページ、筆写日1824年7月7日)が所収されているが、最初の6曲を含めて、作曲は筆写日より前だったはずである。カイパーの筆写譜には、更に一曲(第7番)が加わっている。この7曲目は、ヨルン・L. バイムフォールの博士論文『フリードリヒ・クーラウのハ長調の協奏曲とピアノソナタ』(ハンブルク、1971年、楽譜巻18頁)に掲載されている。このメロディはノルウェー起源の「ポール、彼のにわとり」(Poul His Chicken)に由来する。
カイパーの筆写譜第1巻には、変ホ長調3/4のAllegro con brioの導入として変ホ短調3/8のAdagioが、同じくト短調の6/4 Allegro non tantoの導入としてト長調2/2のGraveがある。筆写譜では、これら2曲はいずれもクーラウが作曲したものとしてあるが、重苦しいピアニスティックでないパッセージ、緊張感のない和声、多くの3度-6度進行から考えて、クーラウの様式とは異なる。おそらくカイパーが作曲したものであろう。