この曲の魅力を引き出すには、各セクションの演奏を異ならせる事にあります。全く同じ音色で演奏してしまうとこの曲は台無しです。どのようなセクションに分かれるか見て行きましょう。 A 1-8小節間 B 9-16小節間 A 17-24小節間 の3つに分かれます。つまりは3部形式です。 さてここからは筆者の独自の考え方になります。筆者であれば1-8小節間、ペダルを多く使いロマンティックなムードで柔らかく演奏すると思います。アーティキュレーションや休符もそれほど重要視しません。 このAセクションで特に興味深いのは方向性の問題です。Aセクションは2小節単位のメロディーが4つで8小節と考えます。1-2小節目はGBD と DFisA と考えますので、トニックとドミナントになります。そうなると2小節目の2拍目のメロディー音であるEが非和声音になります。そしてそれは、次の3小節目でDに降りて解決すると考えますので、Eは経過音と考えます。多くの場合非和声音は強調して、解決音を穏やかに弾きますが、2小節目の2拍目のEはフレーズの最後の音ですのでアクセント等をつけず、むしろその前の和声音であるFisの方を大きく弾き、Eは消える感じで演奏します(Eは9度の和音の第9音という考え方も出来ますがそれは奏者の自由です)。 3-4小節間、4小節目1拍目のEは明らかなる非和声音でappogiaturaと呼ばれる非和声音です。Eのほうを少し大きく弾き、Dは消えるように弾きます。 その秩序を守りつつ、1-2小節間と、3-4小節間を比べたとき、1-2小節間のほうを若干大きく弾きます。続いて5-6小節間、7-8小節間も同じです。 Aセクションの音楽的イメージとしては、明るく穏やかなイメージですが、オルゴールやミュージックボックスのような音色と思っても良いのでは無いかと思います。 9-16小節間、左手の伴奏系に躍動が見られます。このセクションは少し元気をだし、アーティキュレーションを守っても良いと思いますが、重要なの事はダイナミックの変化です。この急激なダイナミックの変化がはっきりと聴き取れるようにしましょう。14-15小節間の和声の変化は唯一借用和音が来る場所です。バスのライン、H B A も大切に扱いましょう。 ABAのダイナミックだけをよく見てみると、終わりに近づくに従って音量は大きくなるように書かれてあります。再び戻ってくるAセクションは元気よくフォルテで演奏します。 この曲の変わった部分として、最後の2小節がクレシェンドで終わっているのにも関わらず、クレシェンドをした結果がメゾフォルテという強弱記号になっています。17小節目にはフォルテが書いてありますので、どこかでダイナミックを一度落としてからメゾフォルテに向かうという事と考えます。 その際に、Bセクションを思い出してみてください。1拍目にバスの音がある9-10小節間は、17-20小節間と似ていますね。また、11-12小節間のように、1拍目にバスが無い部分は21-22小節間と似ていますね。 9-10小節間がメゾフォルテに対して、11-12小節間がpであるのであれば、例えば、17-20をフォルテ、21小節目に至ったところで一度pに落として、最後はクレシェンドでメゾフォルテに達するという考え方も出来ると思います。